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 実はこれら「朝日の冷笑」の答え合わせになる本を最近読んだ。『絶望からの新聞論』(地平社)だ。著者の南彰氏は朝日新聞を昨年退職した。南氏によるとここ数年、

《上層部はネット上で「また朝日が」と書き込まれることを極度に警戒していた。》という。

『絶望からの新聞論』(地平社)

 吉田清治氏による虚偽の証言に基づく「慰安婦」の記事と、福島第一原発事故の政府事故調に関する吉田昌郎所長の調書に対する記事を巡り、朝日新聞は批判を浴び続けた。読者としての実感でも、あれ以降の朝日は腰が引けた印象があったが、本書によれば朝日上層部は批判を恐れ「管理」を強化するようになった。

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社員のSNSを監視

 広報部を訪れたとき、「南さんのSNSも毎日見ていますよ」と言われたという。

《朝日に関する投稿を三~四人でチェックしている部屋で、担当者がパソコンの画面を見せてくれた。社員のSNSでの投稿内容や「炎上」を監視するタイムラインが映し出されている。その結果をまとめたレポートが平日は毎日、経営陣や所属長にメールで送られていた。》

 一方で、デジタルの数字や反応ばかりを追いかけるようになり、記事もデジタルで読まれやすい「消費するニュース」に傾いたというのだ。

《取材の出張申請のときに「その記事で有料会員はいくつとれるの」と口にする編集局幹部まで現れた。》

 読まれやすいニュースの具体例には朝日新聞デジタルで配信された『京大卒ジョーカー、挫折の先の自己実現 ウケ狙いから当選への分析』(2023年5月30日)がある。虐待や性被害などにあった女性を支援する一般社団法人「Colabo」の東京・歌舞伎町の活動現場に出向いて、冷笑的、差別的な言葉を投げつけていた埼玉県草加市議について、そうした言動について触れないまま、政治スタイルを好意的に紹介したのだ。

《「デジタルで読まれそうな記事を」という編集局幹部の号令のなかで企画された記事だった。》

《コラボに対する攻撃がこの年起きていたときには、現場をルポし、ミソジニー(女性蔑視)に基づく攻撃がもたらす影響などを取材していた女性記者の記事に何度も注文をつけて記事の配信・掲載を二カ月近く先送りしていた。「コラボを擁護して、『また朝日が』と言われないようにしないといけない」という意見が繰り返された。》

政治部デスクの発言にゾッとした

 さらに朝日時代の南氏にはこんなエピソードがあった。2年前に安倍晋三元首相銃撃事件が起きた深夜に、

《参院選報道を仕切っていた先輩の政治部デスクが突然、ニタニタしながら近づいてきて、「うれしそうだね」と話しかけてきたのだ。》