歴史の教科書でおなじみの空也上人や耳なし芳一、奈良のゆるキャラ・せんとくんなど、誰もが一度は目にしたことがあるような親しみがあるコスプレ姿が度々話題になるクリエイターの中野さん。
いったいなぜマニアックな題材ばかりにチャレンジするのか……? 空也上人との出会いや、自身のコスプレ愛について深く語ってもらった。(全2回の1回目/後編を読む)
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「仏像の格好良さ」にやられた少年時代
――中野さんは、Xで空也上人や耳なし芳一の画像が度々話題になっていますよね。そもそも空也上人や耳なし芳一って、対象をよく知らなくても絶対にみんなわかるようなアイコニックな題材で、それを選ぶセンスがいいなと思います。なんでコスプレしようと思ったんですか?
中野 空也上人はもともと好きだったんですよ。出身が大阪なのですが大阪の子どもって、遠足などで奈良の大仏を見るんです。そうするとクラスに1人か2人ぐらい、少なくとも2クラスに1人ぐらいの割合で大仏とか仏像好きの子どもになるんです。
――男の子って一回は電車が好きな時期が来るけど、そうした「電車」「車」などに加えて「仏像」が入ってくるみたいな?
中野 電車や車に比べるとずいぶん少ないだろうとは思いますけど、何人かのうち1人は仏像好きになりますね。真面目な人ならそこで仏教を学び始めるんでしょうけど、僕は幼少期のプリミティブな気持ちで大仏を見てしまったので、「大仏すごい」と思いました。例えば、子どもに人気のロボットがどれだけかっこいいといっても、せいぜい最近のかっこいいものじゃないですか。それを考えると仏像はかっこいい歴1000年のものなので。
――かっこいい歴1000年! 確かに……新しい発想です。
中野 大仏を小学生の時に体験して、その後中学生ぐらいで、週末になると大阪から京都まで電車で行く、というのをやっていました。その時に六波羅蜜寺に行って空也上人像を見たときに、空也上人像って口から仏像が出ている。
空也上人が唱えた「南無阿弥陀仏」という声が、仏の姿になったという伝承があるんですけど、それを仏像で表現した。漫画の吹き出し表現みたいなのをこの時代にやっていることに驚きもあって。でも、若いうちには空也上人のコスプレをしようと思いませんでした。
気持ちが変わったのは2010年に奈良のゆるキャラ、せんとくんのコスプレをしたんですね。その当時、せんとくんは流行していたからやってみた感じでしたが、せんとくんは仏像ではないけど、鹿の角が生えた童子の姿をした、仏教の影響を受けたキャラクターです。
そのコスプレがうまくいったことで、じゃあ次はいよいよ長年やりたかった空也上人をやってみようと実行したのが2011年でした。なので、空也上人歴ももう13年。ただ空也上人もそこから何度かやってから小道具の破損などがあり、しばらくはやってなかったんです。
――よくSNSでお見かけしていたので、ずっとやられていたのかと。