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中野 口から出る仏像も作り直しても良かったんですが、これを作ってくれたのは2021年に亡くなった僕の友人です。そいつの形見として使い続けようという気持ちもあって。

 耳なし芳一の時に体に書いたお経も、その友人が朝5時にうちに来て書いてくれたもの。首から上以外全身書いてもらって、あとはコミケの更衣室で書いてもらいました。また、空也上人をやる際後頭部は自分で見えないので、空也のコスプレをするときは一緒に更衣室に入ってくれる友人を毎回募ってお願いしています。

友人の形見となった空也アイテム ©山元茂樹/文藝春秋

――ご友人の協力あってのコスプレでもあるんですね。

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中野 コスプレに限らず、人間みんないろんなところで助けられて生きているなぁと思います。

自分を素材にして他者になりきるのが楽しい

――コスプレの苦労や楽しいところを教えて下さい。

中野 コスプレにはコスプレ以外では代用できない楽しさがあります。僕は自分のことがあんまり好きじゃないんですけど、自分を素材にして、他の人になれるというのが楽しい。

――自分を素材にする……!

中野 例えば絵を描くとか、人形を作るとかの他の創作って自分じゃないものが素材になるけど、コスプレは自分を素材にして、一回自分の外見とか肉体とかを客観的に見て、自己と自我を分けるみたいな作業が発生する。その感覚って他の趣味にはないのですごく楽しいんです。

――自己と自我を分ける。中野さんは完全に自分を「コスプレの素材」に見ているんですね。

中野 あと、苦労もいくらでもあります。空也上人でいうと夏は暑くて冬寒い。肌の色を仏像に寄せるために真っ黒な舞台用のドーランを塗っているんですけど、直射日光を浴びると皮膚の表面が夏場のアスファルトぐらいの温度になるんです。冬は当然寒いし……。

――空也上人コス、どの季節にも向かないコスプレなんですね。

中野 夏は日焼けではなく火傷になります。耳なし芳一は……お経を書いていたところだけ、日焼けせずにしばらくお経の跡が白く残りましたね。夏、炎天下で日焼け止めを塗らずに耳なし芳一をすると、お経の日焼け跡が残る、という学びを得ました。

後日、お経の日焼け跡が残った耳なし芳一コスプレ(写真:本人提供)

――日焼け止め塗ってください!