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イチロー、松嶋菜々子、菅原文太……。豪華ゲストが次々に登場

 無人島に一つだけ持って行くならば、真っ先に『古畑任三郎 COMPLETE Blu-ray BOX』と答える筆者も、『古畑』がレギュラー放送されていた1999年頃はまだ小学生で、リアルタイムで鑑賞した記憶はほとんどない。イチローや松嶋菜々子などの超豪華キャストが名を連ねたスペシャルドラマFINALや再放送、木村拓哉など有名人たちによるモノマネによって古畑を知った世代だ。

 新作の放送が定期的にあったわけではないが、その間多くのファンたちが愛を語り継いできたドラマなのである。

 本作最大の見せ場はやはり、超豪華俳優が演じる犯人と古畑の対決だろう。ゲストのキャスティングは脚本を手掛ける三谷幸喜とプロデューサーによって考えられ、毎回“当て書き”されていたという。

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『古畑』シリーズの脚本を手がけた三谷幸喜 ©文藝春秋

 たとえば、ハードボイルドなベテラン警視を菅原文太が、アイドル的な人気を誇るクイズタレントを唐沢寿明が、スター性はあるが古典は全く知らない新進気鋭の若手落語家を松本幸四郎(当時は市川染五郎)が演じていた。そんな、ゲスト本人のパブリックイメージを最大限に活かしつつも、「殺人を犯す」という最大のギャップを抱いたそのキャラクターは、2つとない犯人像を作り上げた。

5月31日に再放送された第1シーズン最終話「最後のあいさつ」に登場した菅原文太(享年81) ©文藝春秋

『古畑』が愛されつづける理由

 しかし、古畑をあまり知らない若い世代は、不思議に思うこともあるのではないだろうか。というのも、『古畑』は先に犯人を明かす倒叙式ミステリーということだ。

 意味ありげな古畑のオープニングトークから始まり、事件が発生。完璧だと思われていたアリバイから綻びを見つけた古畑が、圧倒的な推理力でその牙城を崩していく。つまり視聴者には、最初から“ネタバレ”状態なのである。

 なんでも考察を求められる令和のドラマ視聴者にとっては、その良さがわからないかもしれない。『古畑』が時代を超えてなお、愛されつづける理由はなんだろうか。