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月収約33万円、残業は基本的にナシだが…「物価は高い」27歳保育士が実感した“キラキラ”だけじゃない海外移住のリアル

『ルポ 若者流出』より#2

genre : ライフ, 社会, 読書

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日本とは違う保育環境 「保育士の負担少ない」

 2021年からカナダで保育士として働きはじめ、あっという間に1年が過ぎた。今のデイケアでは午前8時30分~午後5時の勤務。基本的に残業や持ち帰り仕事はない。8時間を超えると時給が1.5倍になる決まりがあり、園側も残業をすることを嫌がる傾向があるという。運動会やお遊戯会といった行事はほとんどない。自身が幼い頃に通った保育園を思うと不思議な感覚だ。

©AFLO

「でも保育士の仕事として考えると行事の準備はすごく大変なので、時間を取られることがないのはメリットだと思います」

 日本でよくある季節や行事ごとに保育室を飾り付ける仕事もない。親の残業に合わせて、保育時間の延長をする家庭がほとんどないのも日本の保育園とは違う点だ。

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 1人の保育士が何人の子どもをみるかという保育士の配置基準も日本とは全く違う。日本の基準は、0歳児は3人、1~2歳児は6人、3歳児は20人、4~5歳児は30人。一方、まどかさんが働く州では0~2歳児クラスは4人、3~5歳児クラスでは8人だ。

 自分が担当する2歳児はまだ言葉がつたなく、ときに癇癪を起こすことも珍しくない。

 偏食の子もいれば、昼寝が嫌いな子もいる。移住してきたばかりで英語の上達が遅く自分の意思をうまく伝えられずに、物にあたる子どももいる。保育士としてなにができるか。毎日、アプローチの仕方を変えて接するには忍耐力も必要だ。

「自分の感情をコントロールしながら子どもたちに接するので、精神的に疲弊することもあります。同僚とはわたしたちの仕事は子どもにギブする(与える)仕事で、1日の終わりには自分のなかにほとんどなにも残っていないと話します」

 体力的にも精神的にも大変だが、それでも日本と比べて保育士の負担は少ない。昼食や昼寝の時間を子どもによってずらすなど、子ども一人ひとりに柔軟に対応する余裕がある。