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「希望の星」から転落した中国

 社会主義国中国は、1978年に鄧小平の下で「改革開放」が始まり、資本主義的な政策を導入していきます。1980年以降、30年にわたる高度成長を実現し、2011年に日本を抜いて世界第2位の経済大国になります。途上国の「希望の星」となったのです。

 ところが、2012年に習近平氏が党総書記に就きました。まだリーマンショックが引き起こした大不況から多くの西欧諸国が抜け出せていない時です。中国はその苦境を反面教師とし、「民主主義」や「法の支配」や「思想の自由」といった近代社会の基本原理を「西欧的価値」と同一視し、それに対抗する「中華民族の偉大な復興」を目指し始めたのです。そして、世界第2位の経済大国になった勢いを背景に地政学的な拡大姿勢を強める一方で、香港の自治を弾圧し、個人の監視体制を強化しました。「希望の星」が一転して「ディストピア」となったのです。モンテスキューの法則を破綻させ、(他の反西欧的な強権国家とともに)グローバルな世界を分断してしまったのです。

民主化デモを抑える香港警察 ©時事通信社

 いま世界は、「第二次グローバル化」が中断し、それに伴う混乱の真っ只中にいます。第二次グローバル化を主導してきたアメリカも、その恩恵をもっとも大きく受けた中国も「ディストピア」となってしまいました。

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本記事の全文は、『文藝春秋』2024年6月号と『文藝春秋 電子版』に掲載されています(「2つのディストピア 米中に呑み込まれるな」)。