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 一方、ドイツ軍の方はどうだったか。ルントシュテット、ロンメルが指揮する西方総軍は、連合軍がパ・ド・カレーへ上陸すると予想して守備を堅めていた。ところが首相のヒトラーは異なる意見だった。

ロンメル ©dpa/時事通信フォト

〈ヒトラーは、海岸線の長さから大規模な上陸作戦にはノルマンディーの方が適している、また、要塞化されたパ・ド・カレーを連合軍が選ぶのか疑問との軍統帥部の意見から、ノルマンディー正面の重要性を考慮しロンメルに対して同正面への増強を促していた。(略)

 このように両者間に認識の違いがあったが、最終的にヒトラーが西方総軍の考えに譲歩し、また自身も徐々にカレー正面を重視する考え方に変わっていった。この結果、軍首脳部が取り返しのつかない誤謬を犯し、作戦計画修正の機会を失ったのである〉

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 そして「反撃に関する戦略」においても、ルントシュテットとロンメルが対立していた。

〈ルントシュテットは、「上陸した連合軍主力を沿岸部の後方地域において機甲戦力で打撃し、撃破する」との方針を主張した。

 それに対してロンメルは、「連合軍が制空権を握っている限りは、わが軍の機甲師団の日中の移動は困難であり、敵主力の上陸を許せば侵攻は食い止められない」との認識から、「水際撃滅」をとなえた〉

 山下氏はこう評する。

〈作戦において最も重要なことは、「各指揮官の認識の統一」であり、一つの方針の下に作戦計画が立案され、これに基づき準備され実行されなければならない。

 ドイツ側の陣容をみると、配置された各将軍は優秀であるが、協調性を欠き独自の意見で動いていた。これは「人事上の失敗」である〉

 ドイツ軍は、戦闘以前にすでに敗北していたと言える。

サプライチェーン、ロジスティクスの重要性

 さらにノルマンディー上陸作戦を成功に導いた要因として、山下氏が強調するのが「サプライチェーン」「ロジスティクス」の重要性だ。「上陸作戦」は、単に「上陸」するだけでは終わりではないからだ。