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 こうしたコンセプトの賞であるため、Kobo賞の受賞部門は多岐にわたっている。なにせコミックが7部門、書籍・写真集が10部門。さらに特別賞まであり、とにかくなるべく多くの作品を顕彰しようという勢いが凄い。キングの『異能機関』はそのなかで「小説(海外編)」部門の大賞を受賞したわけだ。

 さっそく本作の訳者、白石朗さんに受賞を伝えた。

「キングの作家生活50周年という途方もない節目の年にこういうことがあるなんて、素直にうれしいですね! 感無量です。

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 キングといえば早くから電子書籍に注目していた人で、作家生活の折り返しの頃だった2000年に、『ライディング・ザ・ブレット』という中篇を電子書籍限定で発売したことがあります。24時間で40万ダウンロードされて、発売元のサーバが落ちたとか(笑)。

 世界クラスの人気作家でそういうことをしたのはキングが初めてで、黎明期だった電子書籍を大きく推し進めたんじゃないでしょうか。その彼が今、電子書籍の賞を受けるというのもまた意義深く思えますね」(白石さん)

それ、50周年記念刊行で読めるようになります(宣伝)

 なるほど、キングと聞いた当初は意外にも思ったが、実はきわめて的を射た授賞だった、というわけだ。ちなみに、この『ライディング・ザ・ブレット』は長らく入手困難になっていたが、2024年9月に50周年記念刊行の一環として文春文庫から日本オリジナルで発売予定の中篇集『コロラド・キッド 他2篇(仮)』に収録される。ファン必携の一冊といえよう!

 ……と、さりげなく宣伝しつつ、白石さんには授賞式でのスピーチをお願いし、快諾いただいた。翻訳書籍をやっていると、意外と「式」に出る機会がない担当も、いそいそと出席の連絡をする。