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 山本社長が続けて「私自身から皆さんがたに私の真意をお伝えしたいという希望がありまして」と彼女の言葉を代弁すると、中森さんは口を軽く開け、舌を上の歯の裏につけた。

 舌の動きはその人の考えや気分を読み解くカギとなるといわれる。強いストレスや不安を感じて躊躇する気持ちを、なんとか落ち着かせようとしているように見える。

「本人の言葉を聞いて欲しい」という山本氏の発言とは裏腹に、彼女は今にも泣きそうな顔で、うつむくようにゆっくりと首を横に振った。心の底ではそっとしておいてほしかったのではないだろうか。

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若き日の中森明菜 ©文藝春秋

「私も自分なりに必死に耐えましたし…」

 6カ月ぶりに姿を現した中森さんは、まず「え~皆さん」と報道陣へ呼びかけ、感謝を口にしたが、その声はか細く震え弱々しい。そしてこう続けた。

「皆さん、生きていらっしゃる限り、一人ひとり色々な悩みを抱えて生きていらっしゃると思います。それを一生懸命乗り越えて、頑張っていらっしゃる方が沢山いらっしゃると思います。私も自分なりに必死に耐えましたし、頑張ったつもりです」。

 復帰しようという人間が口にする言葉にはとても聞こえない。言い終わると柔らかく微笑んでは見せたが、視線を落としたままで眉はハの字、口角も下がり寂し気だ。一度顔を上げて記者たちを見回すと、迷惑と心配をかけたと謝罪した。

「そして何よりもやっぱり」と、彼女は頬を持ち上げ、優しい笑顔を作ってみせ「私の大切なファンの皆さん」と語りかけ、「ごめんなさい」と頭を右に傾け首を傾げるように謝った。

 この仕草からは、ファンに許してもらえるのか心配と不安でいっぱいの内面が見てとれる。それを反映して、ファンに無抵抗で甘える印象を与える表情だった。

「金屏風会見」当日の中森明菜 ©文藝春秋

 中森さんの姿も声も憔悴した印象で、とても「元気になった」ようには見えない。「明るい私でいきたいと思います」と言いながら、小さく首を振る彼女。

 白い歯を見せるが眉尻は下がり、目元も動かず、口角はまっすぐで作り笑いとすぐにわかる。