「リフィル処方箋のさらなる普及・拡大について、総理から御指示もいただきました。しかし、その後調べてみますと、2021年末に行った医師を対象とした調査では言葉自体を知らないと答えた医師が何と43%に上るそうです。その後、少しは改善されているかと思いますが、実際に私の周辺にも、医師がその内容をよく知らないことを理由としてリフィル処方箋の発行を断られたという人が複数おります」

 6月6日、岸田文雄首相が出席した「デジタル行財政改革会議」でそう訴えたのは、中室牧子慶応義塾大学教授だ。リフィル処方箋とは、医師の診断を受けずとも一定期間、使うことのできる処方箋のことで、2022年の診療報酬改定で導入された。4月22日のデジタル行財政改革会議でも、岸田首相が「リフィル処方の普及策を具体化してください」と武見敬三厚労大臣に指示を出した。つまり“首相肝いり”の重要政策でもあるのだ。

岸田首相 ©時事通信社

国民医療費が兆円規模で削減できる

〈リフィルが日本の医療を変える。大きな既得権を打破できる。そして社会構造を変える〉

ADVERTISEMENT

「文藝春秋」7月号でリフィル処方箋普及の意義について綴ったのは「憂国グループ2040」。学者やエコノミストのほか官僚も加わり、日本の社会や経済問題について研究を重ねてきた有志のグループである。

 ではリフィルが普及すれば、どんなメリットがあるのか。

 憂国グループ2040がリフィルの活用に最適だと指摘したひとつは花粉症だ。

〈花粉症のように、毎年同じ時期に、同じ原因で、同じ症状が出るのであれば、患者自身の判断で同じ薬を服用すれば事足りる。命にかかわることもないし、改めて薬のことが知りたければ薬局で話を聞けば十分だ。医師の判断を聞くまでもない〉

〈診療所に薬をもらいに行くだけの受診行動が変われば、無駄な受診が減り、時間の節約になる〉

 花粉症だけではない。痛風など、一回、医師の診断を受ければ、あとは薬をもらうだけの受診で済むような病気はすべてリフィルが適用になる。そして話は家計にとどまらない、このリフィルが普及すれば、右肩上がりを続け、いまや約48兆円にのぼる国民医療費の削減にもつながるのだ。