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レカネマブの費用対効果は?

 レカネマブは他の抗認知症薬と比べて安くはありませんが、その費用対効果はどのくらいあるのでしょうか。治験で得られたデータや疫学データなどを用いて割り出したレカネマブの価値を検討した論文を紹介しましょう。

 認知症が進行すると、患者さんにさまざまなコストがかかります。病院への通院、入院、介護・在宅医療サービスを受けるなどの直接的な経済的コストだけではありません。働き盛りの介護離職が社会問題になっていますが、家族の経済的、精神的なコストもあります。

 論文によれば、レカネマブの治療を受けることにより、健康な生活が0.91年延長するといいます。そして、日本人の場合、この0.91年(約1年間)は193万円~467万円の社会的価値に相当すると試算しています。

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 ここでレカネマブの薬価を思い出してください。体重50キログラムの人で年間約300万円でした。先の論文が見積もったレカネマブの社会的価値に収まります。

 したがって、この論文からはレカネマブの薬価は妥当なものだと考えられています。一方、最近のアメリカの研究では、厳格に計算し、レカネマブは年間78万円未満で費用対効果に見合うとしています。費用対効果の解釈にはさまざまな角度からの、さらなる研究が必要です。