世界25か国61地域での研究から健康長寿食を提案する家森幸男氏は、現在85歳の研究者。妻の百合子氏は81歳で小児科開業医だ。ともに京都大学医学部で学び、今も現役で活躍されている。
ここでは、家森氏の新刊『80代現役医師夫婦の賢食術』(文春新書)から、家森夫妻の対談を一部抜粋して紹介する。健康長寿食を実践する、おふたりの日常とは?
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家森幸男(以下、幸男) 私の研究では、一日一食でも大豆や魚などを使った適塩の食事に変えるだけで、健康効果のあることが分かっています。これは実にすごいことで、その結果が出るたびに家内にも伝えましてね。
家森百合子(以下、百合子) 会話と言えば「この料理は何がええ」という話ばかりで(笑)。そのうち買い物へ行っても、これはいい食材、これはダメって、すぐ分かるようになって。私が代わりに講演できそうなくらい健康長寿食に洗脳されました。
「一日一膳」が叶うお弁当
幸男 おかげさまで、ここ10年は「一日一膳」が叶うお弁当を毎日作ってくれてね。「まごわやさしい」の食材が全部入っている。ありがたいし、よくやってくれています。
百合子 夕飯に健康長寿食をと思っても帰りが遅いから、お昼に摂ろうと思って。二段重ねのお弁当箱で、そのうち一段は定番おかずを詰めます。キャベツなどの野菜に、大豆をはじめとした豆類。それにエビやホタテなど魚介にきのこの蒸しもの。
これで「ま(豆)」「や(野菜)」「さ(魚介)」「し(しいたけ・きのこ)」が摂れ、もう一段は「ご(種実)」のごまをどこかに使って、「わ(海藻)」はワカメやとろろ昆布。あとは「い(いも)」を入れたり、卵焼きや鶏肉、焼き魚を入れたり。
幸男 毎日全部で30品目くらい? 卵焼きの中にもいろんな野菜が刻んで入れてあったりね。
百合子 だから2人分を作って詰めるまでに2時間! しかも主人はそのお弁当を毎日欠かさず写真に撮って、何が入っているかも細かい字で手帳に全部、書き留めてはる。どんなときも研究者やって思うてます(笑)。
自分のデータを知ることが大切
幸男 いつ何どきも無駄にはできません(笑)。私はお弁当を待つ間に血圧や体組成、腹囲を測ってセルフチェックの時間にあてています。
以前、ブラジルで魚や大豆などの成分を食べてもらって、血圧やコレステロールの変化を調べる実験をしたことがあって。半数の人に血圧計を、残りの人に体組成計を渡したんです。すると、血圧が一番早く下がるのは血圧計を渡した人、コレステロールが一番早く下がるのは体組成計を渡した人だった。セルフチェックで早く効果が表れる。自分の体を知ることはこれほど大事なんです。