2023年12月から保険適用になった、新規アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」。その実力は――。ここでは、慶応義塾大学医学部特任教授・伊東大介氏の新刊『認知症医療革命』(扶桑社新書)を一部抜粋して紹介する。
レカネマブによる治療はどのようなペースで進むのか? 治療にかかる費用は? 詳しく解説する。(全2回の1回目/続きを読む)
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Q.レカネマブの治療はどのようなペースで進みますか?
レカネマブによる治療が適応となった患者さんには、2週間に1回、点滴により1時間かけて静脈に薬剤を注入します。これを18か月くり返します。
投与に際して、4人に1人の割合で発熱、寒気などの感冒(風邪)様症状が表れます。ほとんどは軽症で、点滴が終了してから数時間経って表れることが多いようです。もし症状が辛ければ、アセトアミノフェンなどの解熱剤を内服していただきます。症状も対処法も新型コロナワクチンの副反応のものに似ています。レカネマブによる感冒様症状が出る7割の人は初回の投与後だけで、その後は起きません。
副作用の症状
5回目、7回目、14回目の投与前にはMRI検査を受けていただき、ARIA-E(※1)およびARIA-H(※2)がないかどうか確認します。もし重篤なARIAが発見されれば投薬を中止します。副作用の症状として知られているのはめまい、頭痛、ふらつき、視覚障害、吐き気、異常言動などで、もしそれまでなかったようなこの種の症状が出た場合にはすぐに受診してください。
※1 脳浮腫(脳のむくみ)
※2 脳出血
投与から18か月経った後は、認知症の進行度合いを評価し、レカネマブの投与を継続するかどうか検討します。実はレカネマブの効果がどれくらい続くかについてはまだ結論が出ていません。ただしアルツハイマー病の患者さんの場合、アミロイドβ(※3)が蓄積しやすい体質は変わらないので、レカネマブの投与をやめてしばらく経つと再びアミロイドβが蓄積し始めるだろうと考えられます。
※3 アルツハイマー病を引き起こす原因物質のひとつ