「お願いだからボナと仲直りしてください」と言いに来た第一夫人
――すでにボナさんの家族を紹介されていたということですが、抵抗もあった?
陽子 そこはずっと葛藤がありました。ベナンでは一夫多妻制は普通のことでも、私からしたら、「これって不倫やん」という思いが消えなくて。自分は奥さんや子どもに会うのも気が引けるけど、ボナは全然気にしないし、ずっと私だけモヤモヤしている感じで。
そんなとき、ボナと大ゲンカして「もう別れる!」となったことがあるんですけど、その後、第一夫人が私の家に1人でやって来て、「お願いだからボナと仲直りしてください。ボナはいい人です」みたいなことをわざわざ言いに来たんです。
――ボナさんでなく、第一夫人が引き止めに来るのは驚きですね。
陽子 第一夫人は小さいときに隣のナイジェリアに出稼ぎに行ったことがあるそうで、英語が少しできるので、拙い英語で伝えてくれて。
私の存在って、第一夫人にとっては複雑なものがあると思っていましたが、かといって嫉妬だけでもないのかな、という気もして。第一夫人への感情もちょっと変わりましたね。
この国のスタイルを受け入れていくことで気持ちを落ち着かせ
――陽子さん自身は、第一夫人に対して嫉妬の気持ちがあった?
陽子 ありました。ただ、ベナン人の男性は一箇所に定住するのが良くないことだと言われていて、妻のいる家だけでなく、彼女の家とか、いろんなところを転々として暮らす人は普通にいてます。
私がいくらボナを独り占めしたくても、ベナン人の男性には通用しないことなんだと、この国のスタイルを受け入れていくことで気持ちを落ち着かせていったような感じです。
――ベナンでは一夫多妻制が普通ということですが、男性一人につき妻の人数は平均何人くらいなのでしょうか。
陽子 実は、ポリガミと呼ばれる一夫多妻制は、すでにベナンの法律で禁止されているんです。そんな中で、農村部ではいまだに風習として色濃く残っていて、私の周りだと、最も多い人で8️人、妻がいる人もいます。
何人妻を持てるかは男性の財力にかかっているので、それがステータスとしても機能しているようです。
――では、ボナさんが今後、もっと妻を持つこともあり得る?
陽子 ボナは、第二夫人まで、とお父さんと約束をしたそうなので、それはないかなと思います。そもそも彼自身は、妻は1人で良かったらしいんですけど、お父さんからダメと言われたらしく。さっきも話した、ステータスとかそういうことかもしれません。