西アフリカの最貧国とされ、NBA選手・八村塁氏の父の故郷としても知られるベナン共和国。そのベナンで、現地人男性の第二夫人となったのが、看護師のエケ陽子さんだ。 

 青年海外協力隊ではじめて訪れたベナンで現在の夫・ボナさんと出会い、日本で結婚・出産をした後、昨年、家族でベナンに移住。そんな陽子さんに、その暮らしぶりやカルチャーについて聞いた。(全3回の2回目/続きを読む

左から陽子さん、長男、夫のボナさん、次男

◆◆◆

ADVERTISEMENT

ブードゥー教の呪術「グリグリ」をかけられて

――陽子さんが暮らすベナン共和国の地方都市では、呪術が根付いているそうですね。

エケ陽子さん(以下、陽子) 私が暮らす農村部ではブードゥー教を信仰している人が多いんですけど、その一環で、呪術師が「グリグリ」というおまじないをかけることがよくあるんです。

――「グリグリ」とは、具体的にどんなおまじないなんでしょうか。

陽子 良いおまじないもかけられるんですけど、他者に対して呪いをかけることもできるのが「グリグリ」で。たとえば、「あの人の仕事が成功しないようにグリグリをかけてくれ」といったかたちで呪術師にお酒とか豚、ヤギなんかのお供え物を持っていって、グリグリをかけるんです。

――前回、「外国人=お金持ち」と捉えられることが多いというお話がありましたが、嫉妬から、陽子さんたちもグリグリをかけられたことがある?

 

陽子 あります。良いことよりも、他者への嫉妬から呪いをかける人がやっぱり多いみたいで。人が成功するのを喜べないところはあるかもしれません。

 例えば、ボナが以前働いていたアトリエにあった蓋つきのバケツの中に、フレッシュな血がパッと付いていたことがあって。「ずっと置きっぱなしだったバケツの中に突然なんで血?」と思ったんですけど、結局それは、「誰かがボナに対してグリグリをかけたんだ」と説明されて。

玄関の前に動けなくなった鳥が置かれていた

――「これはグリグリの仕業だ」と、現地の方はわかるんですね。

陽子 そうみたいです。経済的首都のコトヌーに行ったときに泊まったホテルでも、入った途端、まだ腰をかけてもいないベッドにフレッシュな血が付いていたことがありました。

 日本から引っ越してきた後も、家の玄関の前に動けなくなった鳥が置かれていたことがあって。そうしたらボナが、「ああ、これはグリグリかけているな」と言いだして。どういうことかと思ったら、誰かがボナにグリグリをかけたらしいんですけど、ボナはブードゥーの力が強いらしくて、それゆえにグリグリをかけた相手の方が負けてしまって、身代わりになった鳥が動けなくなって終わった、ということだったらしいです。

 なんか本当に不思議なんですけど、グリグリはあるのかな、みたいな感じですね。

――陽子さんやお子さんが「グリグリ」にかかったことは?

陽子 自分は普通に過ごせているので、グリグリにかけられていたかどうかは分からないです。ただ、呪いに使われてしまうから、切った髪の毛をその辺に捨てないようにとか、フルネームは明かさないようにという注意は受けています。