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 藤井は休憩が開けてすぐに、香を吊り上げてから飛車を8六に出て攻める。さて伊藤がどうするのかと見ていると、なんと飛車の前に自陣角を打って香取りを受けた。石田が「勇気君の言う通り、伊藤君は受け将棋なんだねえ」と感心したようにつぶやく。

 佐々木は「いかにもイトタクらしいけど、これではつらいでしょう。▲2一飛成があるから攻めてこないという先入観があったのかな」とつぶやき、「それにしても藤井叡王は名人戦第4局で紋別から千葉に来てすぐ対局と、すごく忙しいのに、研究負けしないのはすごい」と感嘆の声を上げた。まったくだ。27日に名人防衛、28日は流氷観光船を見学していたぞ。そして、昨日30日には本局の検分と前夜祭があった。

伊藤と佐々木は月イチくらいで指す仲

 藤井は飛車を引いてから、こちらもと玉頭に得意の自陣角を設置し、角の位置的性能差を主張する。

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 午後2時からは対局室隣のカンファレンスセンターで大盤解説会が始まった。

 解説会参加の申し込みは開始17分で一般席上限350に達し、最終的には1000名近い応募があったそうだ。当日のキャンセルも数人しかいなかった。

 フラットな大広間だが、大スクリーンが舞台上と側面2枚、計3枚ある。それぞれ対局室の様子と実際の盤面、そして検討用PC盤面などを映し、後部席の方もできるだけストレスなく解説を聞いていただけるようにしている。

 学校帰りの鎌田美礼女流2級も加わり、一門の棋士がローテーションで解説、私はパソコン操作兼進行役をつとめた。最初は佐々木と三枚堂で解説し、伊藤の話題になった。佐々木は伊藤とは研究会仲間で、今期のABEMAトーナメントでは伊藤を指名してチームメイトの関係でもある。

パソコン操作兼進行役をつとめる勝又清和七段(ファン提供)

「イトタクとの付き合いは、彼が三段のときからですね。当時は相掛かりを得意にしていて、とてもよく研究していると思ってVSに誘ったんです。ところが、どこかからイトタクの実力と研究家ぶりを聞きつけた永瀬(拓矢九段)から『伊藤さんの連絡先を教えていただけませんか』と……。イヤとも言えずに教えたんです(笑)。それから2人はずっと指しています。

 私は(伊藤とは)月イチくらいで指していますが、それ以外でも私から『今日空いている?』って声をかけて指す。たまにあっちから連絡くることがあって、だいたいそういうときは、イトタクと永瀬が公式戦で対戦するときです。永瀬とVSできないから、私にって(笑)」

 勇気の話で必ず永瀬が被弾するのはお約束だ。

写真=勝又清和 

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