藤井聡太叡王に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負第4局が、2024年5月31日、千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」で行われた。柏市へのタイトル戦の誘致についてはこちらの記事をご覧いただきたい。本局では私も、立会人である石田和雄九段の弟子として運営に携わる側となる。

千葉県柏市で行われた第9期叡王戦五番勝負第4局

「受け将棋」同士の勝負

 まずは5月30日に行われた前夜祭で、両対局者の挨拶を聞く。

 藤井は記者会見や非公式の場でも、中盤から終盤にかけての読みの精度が落ちていると述べていた。並行して戦っていた豊島将之九段との名人戦七番勝負第2局では、優勢な将棋を踏み込み過ぎて逆転され、再逆転での薄氷の勝利だったし、同第4局でも終盤に精彩を欠いて負けた。叡王戦第3局では終盤で伊藤に読み負けて、対局中も感想戦も、ずっと厳しい表情だった。

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 しかし、この日の藤井は穏やかでスッキリとした顔になっていて、連戦の疲れを感じさせなかった。やはり、北海道紋別市で行われた名人戦第5局(5月26日、27日)に勝ち、名人を防衛したことは大きかったのだろうか。

 藤井は「スコア的にはちょっと追い込まれて、苦しい状況ではあるんですけど、しっかり集中して皆様に最後まで楽しんでいただけるような、熱戦にできるよう、全力を尽くしたいと思っています」と語った。

 伊藤もまた「自分としては久々の大きい舞台での対局と感じております。まずは見ていただいている方に楽しんでいただけるような熱戦をお見せできればと思っています」と決意を述べた。

 両対局者が退場した後、石田門下の弟弟子である佐々木勇気八段と高見泰地七段、そして“ほぼ石田門下”の三枚堂達也七段が壇上に上がり、ここまで3局の振り返りと第4局の展望を述べた。

 高見が第1局について「終盤の藤井さんの指し回しが見事だった」と述べ、三枚堂が第2局での伊藤の「▲2四歩の際どい利かしが素晴らしかった」とそれぞれの指し手を讃えた。そして第3局の解説だった佐々木は、「2人とも本質は受け将棋で似ているんです」と、何度も「2人は受け将棋」を強調していた。その予言は当たることになる。