通常の人狼ゲームでは、占い師や狂人など、細かい役職が設定されるが、番組ではシンプルに、人狼を処刑した村人が勝ち。ゴシップを暴露するリスクは背負うが、その分、勝者には高額な賞金が用意されていた。ゴシップの真偽は人狼が確定するまでわからないため、視聴率を最後まで引っ張ることができる。なんてうまくできた番組だ……と唸らずにはいられない。
その上に、である。書名通り、スタジオ内で死体が発見されるのだ。あーもう、ヤバすぎ! 例によって幸良Pの芸術的なドジっぷりが発揮されるのだが、それだけで芸人のネタより遥かに笑えてしまう。人が死んでいるというのに。彼女の相棒となる、飄々としたチーフAD・次郎丸の冷静な突っ込みがまた、その面白さを際立たせる。全然笑いごとじゃないのだが。
死体が発見されても生放送は止まらない!
始まってしまった生放送は、死人が出たとて、止まらない。幸良Pは死体を隠し、進行を修正しながら放送を続ける。クレイジーだ。
番組が進むうち、出演者の中でもっともモブと思われた一発屋芸人・仁礼左馬が、突如推理を展開し始める。もう一度売れたいという思いが必死すぎて痛々しい男だが、なぜだろう、小説読みとして、彼とはまたどこかで会えそうな予感がした。生放送で共演したくない男ナンバーワンといっても過言ではないインパクトがあり、物語を動かす力のあるキャラクターなのだ。なんつって、登場人物としても一発屋だったら、それはそれで彼らしいのだが……。
ストリップの過激化に伴い爆発的に増えた全国のストリップ劇場も、風俗産業の多様化により、今は激減してしまった。同じように、エンターテインメントの選択肢が増え、誰も彼もがテレビに噛り付いていた時代も終わった。しかし、ブラウン管が液晶ディスプレイに変わってペラペラになっても、まだまだテレビの威力は莫大だ。
人狼ゲームのように、すべてが真実ではないことを知っていてもなお、人の心は簡単に動かされる。ミステリー小説も、ストリップも然りだ。すべてのエンターテインメントは、人間同士の騙し合いであり、私は本作にあっさりと負けた。完敗である。
新井 見枝香
あらい・みえか
X(旧Twitter)@honya_arai
元書店員・エッセイスト・踊り子 。著書に『本屋の新井』(講談社文庫)、千早茜との共著『胃が合うふたり』(新潮社)、最新刊『きれいな言葉より素直な叫び』(講談社)。「コクハク」でエッセイ連載、「AuDee」で番組配信中。