観たら、ムチャクチャ変な映画で(笑)。「なんなんだ、この映画?」と思って。で、優作さんがこういう役をやって、これを撮っている人が『メイン・テーマ』も撮るってことで自分の中で盛り上がりましたよね。今思うと、これはもう縁だったんだなって。
なぜ応募者2万3000人の中から選ばれることができたのか?
――とはいえ、オーディションではスンとしていたそうですね。「将来は何になりたいか」と聞かれて「サラリーマンになりたいです」と答えたという。
野村 やっぱり、親父の倒産とその後のゴタゴタがあって、自営業の大変さを知ってたから、それでサラリーマンとして月給をもらっているほうが安定していいかなと。安定した職業っていう意味で、サラリーマンって答えたんですよ。
まぁ、普通オーディションでそんなこと言わないよね。でも、狙って言ったわけでもないし。ただ、やる気あったのかと言うと、やる気はなかった(笑)。
――そこが良かったんでしょうね。
野村 森田さんはそうだったみたいで、僕を一番推してくれたみたいです。角川(春樹)さんは、違う人を推してたかもしれない。
――そのオーディションで決まりですか。
野村 最終があって、また銀座の東映に呼ばれました。それまでは東京だけのオーディションで、今度は全国から集まって。たしか、大阪とか何ヶ所かでやってたんですよ。それぞれの場所で選ばれた人たちが、最終2次で集まったんです。もう、5人くらいに絞られていましたね。で、優勝したんです。応募者が2万3000人もいたそうで、そこから選ばれたってのはたしかにうれしかったですけどね。
賞金もらってやめちゃおうかなってチラッと考えた
――優勝して、なにかしらの書類を交わすとかは。
野村 いや。「あとで連絡しますから」とか言われて、すぐに帰りましたよ。
――賞金の500万円は? 小切手とか渡されなかったのですか。
野村 500万は、撮影を終えてからじゃないともらえないんです。だって、撮影前に渡して「出るのイヤだ」って言う人もいるかもしれないじゃないですか。
つまり、ギャラなんですよ。僕もチラッと考えましたよ。もらって、やめちゃおうかなって(笑)。それは冗談だけど、そこはうまくできてる。
――薬師丸ひろ子さんの相手役だったわけですが、当時の薬師丸さんはスターですから緊張したのでは。
野村 ひろ子ちゃんもそうだけど、他の共演者の方たちと会っても「うわー」とか思わなかったんですよ。どこか淡々としてたんですけど、(松田)優作さんがフラッと現場に現れた時はどうにかなりそうでしたね。
撮影=石川啓次/文藝春秋
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。