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中国風の架空世界が舞台の「薬屋のひとりごと」がなぜ奈良に? 異例のコラボを生んだのは、JR東海女性職員の“愛”だった

「推し旅」のつくりかたを担当者に聞く

2024/06/22

genre : ライフ,

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杉山:なるほど。いままでの推し旅コラボだと沿線にゆかりの場所があって結びつきますが、原作の舞台が架空とはいえ中華風帝国ですよね。それを奈良で、というのはどんなきっかけだったのでしょう。

岩本:いろいろな方と相談しながら詰めていきました。原作がフィクションなので、いわゆる「聖地」はないんです。それを日本でやるとしたらどこがいいかと考えたときに、一番に思い浮かんだところが奈良の薬師寺でした。

薬師寺などデジタルスタンプラリースポットに行くと、猫猫(悠木碧さん)のボイスを聴ける 撮影・杉山淳一 ©日向夏/イマジカインフォス イラスト:しのとうこ

杉山:「薬」しか合ってないような気がしますが雰囲気はわかります(笑)。奈良の文化は中国から渡っているし、建物の雰囲気も似ていますね。薬師寺さんは原画展の会場も提供してくださるなど、とても協力してくださいました。薬師寺さんは「薬屋のひとりごと」をご存じでしたか。

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岩本:薬師寺さんのご担当のかたが「薬屋のひとりごと」の大ファンだったんです。猫猫の声を演じている声優の悠木碧さんのファンでもあるそうで。

杉山:それは薬師寺さんにとって願ったり叶ったりという。

岩本:奈良を調べていくと、日本の漢方の発祥の地だとか、主人公の猫猫はお酒が好きで日本酒にも結びつく。しらべるほど奈良には親和性があるとわかって、奈良でやってみようと。

漢方薬局の店主が「ある登場人物に似ている」と噂に…

杉山:キャンペーンでは奈良を原作世界に見立てるかと思ったら、猫猫が原作の世界から日本にやってくるという設定なんですよね。このストーリーができて、作品の世界と奈良がきれいにつながった。もともとJR東海が「いざいざ奈良(奈良キャンペーン)」を長い間やってきた経験がいきていたように見えました。

岩本:今回の企画は 「推し旅」キャンペーンとして展開しましたが、奈良には、奈良を盛り上げていきたい、奈良の魅力を知ってもらいたい、というお気持ちある方が多かったので、この企画を提案した時も、ぜひやりましょうと、本当にいろんな面から協力していただきました。

杉山:奈良の方々には、JR東海さんがやりたいなら一肌脱ごうじゃないか、と言う空気もありそうですよね。私が「いざいざ奈良」のプレスツアーに参加したときも、薬師寺さんとJR東海さんの親密さがわかりました。ほかの協力店さんはいかがでしたか。今回のスタンプラリーに参加している菊岡漢方薬局さんは「薬屋のひとりごと」をご存じでしたか?

岩本:菊岡さんは「名前は聞いたことある」くらいでした。何度かお伺いして、作品の概要をお話しして。店内にある古くからの薬棚などの調度品が、原作のイメージに似ているんです。

杉山:そうでしたね。店主の菊岡さんも実際に訪れたファンの方から「猫猫にゆかりのある登場人物に似ている」という噂で……。その菊岡漢方薬局では薬膳カレーのスパイスを作る体験ができますね。