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 しかし『薬屋のひとりごと』の舞台は中華風の架空世界、茘(リー)帝国だ。主人公の猫猫(マオマオ)は後宮に勤める官女で、イケメン宦官の壬氏(ジンシ)とともに、薬学の知識で事件を解決していくストーリーになっている。

 どうして日本で、なぜ東海道新幹線でコラボができたのか。たとえば「ラブライブ! サンシャイン!!」のコラボ「沼津ゲキ推しキャンペーン」は東海エリアの沼津市が舞台になっている。しかし異世界とコラボとなると、どう結びつけていくのか。

『薬屋のひとりごと』は自作小説投稿サイトで人気となり、出版、コミカライズ、アニメ化へ進んだ出世作だ
©日向夏/イマジカインフォス イラスト:しのとうこ

 JR東海の担当者、営業本部需要創出グループの岩本麻衣氏に聞いた。

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杉山:僕はアニメしか見てなくて。原作小説を後から知りました。さらにコミックスが2つある。コミックスもアニメも小説から翻案したもの。原作小説を書いた「日向夏」さんがいらっしゃって、本の表紙やイラストを「しのとうこ」さんが描いていらっしゃる。中心に原作小説があって、多方面にコラボすると。いま開催中の「薬屋のひとりごと×JR東海 薬屋、奈良のたび」も、原作小説がモチーフになっているのでしょうか。

岩本:こちらも原作からです。本企画のオリジナルストーリーは日向夏先生に監修していだいて、描き下ろしイラストはしのとうこ先生に描いていただきました。

企画のスタートは「JR東海の提案」だった

杉山:その原作の世界ですが、舞台は中国風の架空の帝国です。皇帝がいて、妃が複数いて、建物も中国風だし、衣食住の文化も中国風。そのコラボを日本でやると知って驚きました。このコラボはどなたが発案されたのでしょう?

岩本:JR東海の提案でスタートしました。

杉山:なるほど、岩本さんが「薬屋のひとりごと」のファンなんですね。仕事にしちゃうくらいの。きっかけはアニメからですか。

岩本:最初は漫画がきっかけでした。コミックス版2種類を読んだ後、ライトノベル原作があると知り、あわせて読むようになりました。

杉山:なるほど。推し系のイベントって、提供者と参加者の「好き」のレベルが高まっていないと、参加者が冷めちゃいますよね。その点でもJR東海側の「好き」がしっかりしていて安心しました。岩本さん、いまもニコニコして嬉しそうですよね。

東海旅客鉄道 営業本部 需要創出グループ 岩本麻衣氏(杉山淳一撮影)

岩本:関係者みんなで企画の骨子みたいなところは考えていて。おっしゃる通り、好き以上に原作をよく知らないといけない。そこで原作を1番深く知ってらっしゃる出版元のイマジカインフォス社の担当者さんと一緒に、骨子の部分を詳細に詰めていきました。

杉山:好きだからやりたいという気持ちはわかります。でも、実際は好きというだけでは実現できないですよね。「好き」をどのように実現させていったのでしょうか。

岩本:企画会議で持ちネタを発表するとか、個別に上司や先輩に話すところから始めます。どういう小説で、原作はどのくらい売れていて、アニメ化されて、ファン層が厚くて、このくらいの旅行需要が見込めるからやらせてください、と。