番組を制作する側が何からの「作為」をした場合、それがすべて「やらせ」=「アウト」ということになるとテレビ番組の制作は相当に息苦しいものになってしまう。
つまり、結果的に本当に起きたことといえる場合にはギリギリセーフと判断される。他方で制作者側の関与によって行為者が本来はやらなかった行為をさせてしまうケースは「ウソ」になるので、「ねつ造」とされて「アウト」のケースになる。
「実際にはない事実を作り上げてしまう」(事実のねつ造)とか「事実をゆがめてしまう」(事実のわい曲)があれば、「アウト」となって許されないことは明確だ。
逮捕された幹部4人中3人は不起訴に
では、今回の警察官同士の会話や捜査本部内の打ち合わせの場面についてはどうか。
結果的に警察官同士でそうした会話が行われた可能性が高く、その再現といえるケースではある。つまりあくまで警察の側から見た「事実」である。警察のような公権力がもし判断を間違えた場合、捜査員同士の会話を放送してしまうと、無実の人に「犯罪者」というレッテルを貼ってしまうなど重大な人権侵害が起きる可能性がある。
テレビカメラの前で警察官が一つの会社を犯罪集団と考えて内偵し摘発。その会社の幹部4人を逮捕した。だが、結果的にこの会社関係者のうち4人中3人は検察も立件できないと判断して不起訴にしたケースだった。
今回、報道機関であるテレビ局は警察側の言葉を100%信じるべきではなく警察との関係で「是々非々」の姿勢で臨むべきだったのだ。
番組では、愛知県警のこうした犯罪のスペシャリストという石川完孝警部が蟹江警察署に乗り込んできて、捜査本部で現場の陣頭指揮を執っている様子が描かれている。
押収品を取り出して「アウトだ!」などと呟いていたりする。
圧巻のシーンは捜査本部を指揮する捜査会議の場面だ。石川警部が疑わしい輸入販売会社の幹部たち4人の顔写真を一つずつホワイトボードに貼りつけて説明する。