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「情報バラエティー」だから許されるわけではない

 テレビ東京の石川社長らの記者会見では、この番組が報道番組ではなく「情報バラエティー」だということを強調している。ただ、警察という公権力について事件事故などの捜査に密着する取材をする以上、権力の暴走を記録してしまう可能性はたえずある。

 今回のテレビ東京のような警察密着番組の取材過程でテレビと警察権力との関係が議論されたのは、2013年にTBSが警察権力の暴走を撮影していたケースがある。鹿児島市内で警察官が男性会社員を取り押さえた末に圧死させてしまった事件で、警察は放送前の映像をTBSから押収していたのにTBSはその事実を公表せず、警察密着番組ではその映像を放送していない。

 2018年になって、死亡した男性の遺族が県を相手に損害賠償を求めた裁判でもその映像を使うことができなかったため、大きな問題になった。テレビが警察側と癒着して一体化した関係で制作されることが多いこうした「警察24時」ものの番組のあり方はどうあるべきなのか。民放連やBPO(放送倫理・番組向上機構)でも基準を示すべきだ。テレビ東京が今回、やめることにしたから解決するというわけではない。他の民放局も含めて、この際、「警察24時」もの全体をどうするか見直すべきだろう。

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 本来、報道機関は公権力の行き過ぎをチェックし、捜査権の濫用に目を光らせて市民の人権を守っていくべき立場のはずだ。

テレビ東京新社屋 ©時事通信社

報道機関としての経営責任は?

 結果として公権力との関係でテレビが間違えてしまった場合は、経営トップの責任が問われるのも当然だ。

 2008年、日本テレビの「真相報道バンキシャ!」で岐阜県庁の職員による“裏金づくり”が行われているという匿名の建設会社役員の証言を「スクープ」として放送した。ところがこの建設会社役員が2か月後に別の事件で逮捕され、面会した日本テレビの社員に対して一連の証言がすべて虚偽であったことを認めた。日本テレビは岐阜県に対して公式に謝罪し、当時の社長が辞任した。

 今回、テレビ東京の石川一郎社長の役員報酬30%を2か月間返上というのは報道機関のトップとしてあまりに軽い責任の取り方ではないか。

 もちろん事例は違うとはいえ、辞任した日本テレビの当時の社長は読売新聞で長く記者を務めた人物だった。テレビ東京の石川社長も日経新聞で長く記者を務めた人物。ともに公権力と報道機関のあるべき関係を十分に理解し、指導する立場であることに異論はない。

「8時45分、通常逮捕します!」という捜査員の声とともに4人が揃って逮捕されて車で連行される映像で「激録・警察密着24時!!」は終わった。しかし、これは「間違い」の放送だったのである。審理に入ると公表した、BPOの放送人権委員会はどのような判断を下すだろうか。