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この条約を締約しているにもかかわらず、化学兵器や対人地雷、クラスター爆弾といった残虐な兵器を戦闘に使用する国が後を絶ちません。

現代においても、ロシアによるウクライナ侵略やガザ地区でのイスラエルとパレスチナの戦闘、シリアの内戦などで、非人道的な兵器の使用が報告されています。武力紛争を地球上からなくすことは、人類の歴史を鑑みると難しいのかもしれません。

ならばせめて、武器使用による残虐な被害を最小限にとどめ、とりわけその累が未来を担う子供たちに及ぶことを防ぐ必要がある。世界の指導者はいま一度、ジュネーブ条約の趣旨に立ち返り、条約の順守を確かめ合うべきではないでしょうか。

近衞 忠煇(このえ・ただてる)
日本赤十字社名誉社長
1939年東京生まれ。学習院大学卒業後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに2年間留学。1964年日本赤十字社入社。2005~2019年日本赤十字社社長。2009~2017年国際赤十字・赤新月社連盟会長を兼務。2022年、長年にわたる人道支援活動の功績が国際的に認められ、個人に贈られる国際赤十字・赤新月運動における最高位の褒賞アンリー・デュナン記章受章。近衞家31代当主。著書に『近衞忠煇 人道に生きる』(中央公論新社/聞き手・構成 沖村豪)がある。