1ページ目から読む
3/4ページ目

ゾンビ映画が大好き

 2007年には放送作家の楠野一郎と演劇ユニット「プロペラ犬」を立ち上げる。その意図を水野は、《作家の楠野一郎が、どこからもオファーされないような凄まじい役……例えばゾンビ役などを私にやらせてみようとするんですが、そんな芝居をやらせてくれるプロデューサーを探すよりも、自分たちでプロデュースした方が早いということに気付きまして(笑)。ですから、年に1回は公演をすると決めたプロペラ犬の活動も、クリエイター志向になったというよりも、出逢って、走り始めてしまったという感じです》と説明した(『キネマ旬報』2008年4月下旬号)。

 この発言にもあるとおり、プロペラ犬の旗揚げ公演『マイルドにしぬ』で彼女はゾンビに扮した。もともとゾンビ映画が大好きで、人生で感銘を受けた映画ベスト3をあげたら、3本ともゾンビものになってしまうと言うほどであった。ゾンビ映画にからんで、2011年のインタビューではこんなことも語っていた。

《役者としての私が魅力を感じるのは、きちんとしているものよりも、どこか崩れていたり、破綻していたりするもの。(中略)これは自分にないものへの憧れかもしれません。自分がまじめでつまらない人間であることを自覚しているからこそ、振れ幅の大きい役を求めるし、演じたい。ゾンビ映画好きも、もしかしたらそこにつながるのかもしれません》(『婦人公論』2011年11月22日号)

ADVERTISEMENT

©文藝春秋

「心も裸でぶつからないと…」

 この年公開された映画『恋の罪』では、幸せな家庭を持ちながらも不倫関係から逃れられない刑事を演じ、ヌードシーンも含むそのハードな演技で注目を集めた。

 もっとも、彼女からすれば、そうした世間の反響は想像どおりであったと言い、そのうえで《本当は裸になるのは簡単なことなんです。服脱げばいいだけですから。舞台では裸になるよりも、もっといろんなものをさらけ出していますしね。今回の映画だって、身体だけじゃなくて、心も裸でぶつからないと作品に参加できなかった。だから、脱ぐ、脱がないという話だけではすまない、と思うのです》と、出演にあたっての覚悟のほどをうかがわせた(『婦人公論』2011年11月22日号)。

 同じインタビューでは、俳優としては破綻したものに魅力を感じつつも、現実ではちゃんとした生活を営んでいくことに憧れているのかもしれないとも語っていた。じつは水野は20代後半以降、婚期を逃したとの思いから、割り切って仕事に集中したものの、30代半ばになって「いま頑張らないと結婚はない」と感じ、このころには誘いがあれば積極的にパーティに参加したりと婚活に励んでいたと、のちに明かしている(『美ST』2019年1月号)。

 こうした努力が実を結び、2016年には同業の唐橋充と結婚を前提に交際を始め、3ヵ月で結婚した。翌年には43歳にして第一子を出産する。