文春オンライン

SPEED、SMAP、宇多田ヒカル…韓国の音楽評論家が解説する、「NewJeans」から感じ取れる“日本の音楽シーン”とは

NewJeans日本デビュー#1

note

一世を風靡したグループを思わせるビジュアル

 ビジュアル面では、90年代に一世を風靡した4人組ダンス&ボーカルグループ「SPEED」を思わせる、スポーティなスタイリング、活気あふれるパフォーマンスが加わる。さらに、シティポップや「ネオ渋谷系」の影響もうかがえるなど、この1曲を通じて、リスナーは「自分が好きだった日本音楽」を再発見できるのではないか。

1997年に発売されミリオンセラーとなったSPEED「Starting Over」のジャケット写真
NewJeansのXより

 日本の音楽史に刻まれている輝かしい瞬間――その情緒を理解して、日本のポップシーンにNewJeansの音楽を浸透させたといえるだろう。

トップランナーたちとコラボした“もう1つの曲”

 日本デビューアルバムに収録されたもう1つの楽曲「Right Now」からは、「NewJeansというブランドの広がりへの意識」が感じられる。日本を代表するポップアーティストの村上隆とのコラボレーションが実現し、ミュージックビデオでは、村上のアートの特徴である鮮やかな色彩で楽曲が表現される。こうして、音楽という枠組みを超えて、アートやビジュアルの力でグループの視覚的なイメージを確立した。

ADVERTISEMENT

村上隆 ©文藝春秋
村上隆とのコラボスペースで写真を撮るNewJeans(NewJeansのインスタグラムより)

 さらに衣装は藤原ヒロシが手掛けている。音楽だけでなく、アートやアパレルといったあらゆる領域のトップランナーたちを積極的に起用しているのは、既存のファン以外も注目させるためだろう。

■K-POPを聴かない人も…「NewJeansだけは例外」になる楽曲の魅力

 NewJeansに対する評価でよく聞くのが、「私はもともとK-POPを聴いていなかったが、NewJeansだけは例外だ」という話だ。これこそが、今巻き起こっている空前の“NewJeansブーム”における核心となるキーワードだと思う。

 現在流行している主なK-POPの楽曲は、そのどれもが華やかで強烈だ。競争の激しい市場ゆえに、アーティストは2~3分間の短い曲でできるだけ強いインパクトを与えなければならない。これは大きな満足感をもたらす一方で、聴く上でかなりのエネルギーを要する。

 さらに、こうしたインパクト勝負の楽曲は「似たように感じられる」という意見もある。K-POPというのはすでに「好きか嫌いか」のジャンルとして定着し、ファンである人とそうでない人が二分された状況だったと言ってもよいだろう。

 NewJeansの音楽にはそのような「K-POPファン」に属さない人々を引きつける魅力が存在する。

関連記事