K-POP界に激震が走っている。「BTSの父」と呼ばれるパン・シヒョク氏が創業した芸能事務所「HYBE(ハイブ)」と、その子会社「ADOR(アドア)」の代表を務め、NewJeans(ニュージーンズ)を手掛けた“天才プロデューサー”として知られるミン・ヒジン氏が、互いへの疑惑や主張を巡って全面衝突しているのだ。

 現地ではいったい何が起きているのか。波紋が広がる中で開かれたミン氏の135分にわたる“暴言記者会見”の中身とは? 韓国在住のジャーナリストが、日本では報じられない韓国の実態を取材した。(全2回の2回目/前編を読む

4月25日に韓国の大手芸能事務所「HYBE」とのトラブルについて、緊急記者会見を開いたミン・ヒジン氏 ©AFLO

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 ADORの親会社であるHYBEが「ADORによる内部情報流出と経営権奪取疑惑」と「ミン・ヒジンADOR代表への辞任要求」を発表したのは4月22日のこと。その後すぐに、ミン代表率いるADORは、「HYBEに対して『ILLITアイリットがNewJeansをコピーした』という問題提起をしたら、解任しようとした」と反論した。ILLITは、HYBE傘下のレーベル「BELIFT LAB(ビリーフラボ)」から今年3月にデビューしたばかりの5人組ガールズグループだ。

 しかし、この「NewJeansをコピーした」というミン代表の主張については、専門家や一般大衆から大きな批判を受けている。大衆音楽評論家のファン・ソノプ氏は次のように説明する。

NewJeansのデビューは革新的だったが「全く新しいことはありえない」

「K-POPシーンにおいてNewJeansは『ゲームチェンジャー』のような存在です。つまりは、NewJeansという革新的なグループの登場がそれまでのK-POPシーンをまるきり変えてしまった。

K-POPガールズグループとして初めて、米音楽フェスティバル「ローラファルージャ・シカゴ」のステージに立つNewJeans(NewJeans公式Xより)

 彼女たちはコンセプトから音楽、宣伝方法に至るまで、既存のK-POP界の成功事例とは全く異なる形でデビューしました。1990年代を思わせるアナログ的な感性や等身大の少女というコンセプトでK-POPを聞かなかった大衆まで魅了して、大成功を収めた。だからといってこのようなコンセプトを追求しているグループが『NewJeansの模倣だ』という主張には同意できません。

 K-POP界で『全く新しいこと』というのはあり得ない。結局のところ、NewJeansにも過去のガールズグループのコンセプトや振り付け、スタイリングなどを参考にしたであろう部分が存在します。既存のものをどう包み込み、何を付け加え、どれだけ新しく見えるように作り出すかというのがK-POP界のビジネス方式です」