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『ゼロ・グラビティ』や『オデッセイ』を想起させるシーンも

 とはいえ『THE MOON』は、ハリウッドで製作された過去作の影響下にある。

 例えば、船外活動の危機は『ゼロ・グラビティ』(13年)、ドッキングのプロセスは『インターステラー』(14年)、隊員が一人残される姿は『オデッセイ』(15年)、月面の表現は『ファースト・マン』(18年)、父親の存在が鍵となる点では『アド・アストラ』(19年)を想起させる。

序盤に流れる「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」

 自由なカメラワークによって宇宙船内の無重力を映像で表現することはもはや必須だが、ハリウッドの先例に対する姿勢は、他国に負けまいと奮闘する韓国の国際宇宙開発に対する劇中の姿勢と同期している点も興味深かったりする。

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©2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

 序盤の船外活動中に流れる「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を不吉と咎めるくだりがあるが、奇遇なことに月面着陸捏造疑惑を描いたハリウッド映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(24年)が今夏公開されるのも一興だ。

『THE MOON』
INTRODUCTION
「神と共に」シリーズを手掛けたキム・ヨンファ監督が完成させた、ハリウッド級のSF大作。月面の有人探査を叶えるべく、宇宙へ旅立った韓国の宇宙飛行士たちを描いている。
 重大な危機に瀕しながらも、ミッション達成をたった一人で遂行する新人宇宙飛行士ソヌ役には、アジア全土で絶大な人気を誇るグループ「EXO」のメインボーカル、ド・ギョンスを抜擢。「神と共に」に続きキム・ヨンファ監督作で兵役後初の映画出演を果たした。

STORY
 月面の有人探査を叶えるべく、3人のクルーを乗せた韓国の有人ロケット・ウリ号は宇宙へ旅立つ。しかし、不慮の事故により2人のクルーの命が失われる。新人宇宙飛行士ソヌ(ド・ギョンス)だけが生き残り、月面着陸に成功するが、さらに危機的な状況に陥ってしまう。はたしてソヌは無事帰還し、再び地球の大地を踏むことができるのか。

STAFF & CAST
監督:キム・ヨンファ/出演:ソル・ギョング、ド・ギョンス、キム・ヒエ/2023年/韓国/129分/配給:クロックワークス/7月5日公開