ホン・サンス監督の28番目の作品『WALK UP』で主人公のビョンスを演じたクォン・ヘヒョ。1990年にデビューして以来、映画やドラマ、演劇舞台を合わせ、100本をはるかに超える作品に出演するベテラン役者だ。

 ホン・サンス監督とは2012年の作品『3人のアンヌ』の出演を契機に縁が始まり、現在にいたるまで未公開作を含め11本の映画に出演している。

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撮影前日に「今回は君が主役になりそうだよ」

──ホン監督とはどのように知り合われたのですか。

クォン・ヘヒョ(以下クォン) 監督のデビュー作『豚が井戸に落ちた日』(96年)を観て非常に衝撃を受け、この監督とぜひ仕事をしてみたいと思い続けていました。

 その後、2009年にムン・ソリさんと舞台をご一緒したのですが、その縁でホン監督が観に来られました。それがきっかけで、オファーが来て『3人のアンヌ』に出演が決まったのです。

──本作の出演のきっかけは。

クォン ホン監督の制作方式は独特です。あらかじめ用意された脚本はなく、撮影当日の朝に渡されます。監督が映画を撮るときにまず先に決めることは、いつからいつまで映画を撮るという時間的な制限なんです。あるいは、ある場所を見て映画を撮ると決めるときもあります。

左からクォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ソン・ソンミ、ホン・サンス監督 ©AFP=時事

 その後、その場所に誰々が立っていれば、話が出来そうだというイメージが浮び上がると俳優に交渉します。今回も同様でした。

「そこに行ったらとても興味深かった。いつからいつまで映画を撮らなければならないのだが、どんな話になるかまだ分からない。でもそこに君がいればいいなと思うのだがな」というように連絡が来たんです。

 撮影前日になって「ところで私はいったいどんな役ですか」と尋ねると、「今回は君がリーディングロール(主役)になりそうだよ」とそこで初めて言われたんです(笑)。