今年9月に予定されている自民党の総裁選。にわかにかまびすしくなってきたのが、石破茂元幹事長の周辺だ。今回立候補すれば4回目となる石破茂氏だが、政治学者の御厨貴氏は「自民党内にはそれを快く思っていない人たちがいる」と語る。石破茂のくびきについて御厨氏が語った『週刊文春WOMAN2024夏号』より、一部を抜粋して紹介する。
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各年代のキーマンとなる政治家を考えたとき、2000年代は小泉純一郎、2010年代は安倍晋三で間違いない。では、1990年代のキーマンは誰だったかといえば、小沢一郎になるでしょう。
小泉、安倍はそれぞれ総理として長期政権を築き上げました。しかし、小沢という政治家は90年代に総理はおろか国務大臣にもなっていません。それでも小沢は当時の政界に大きな影響を与え続けていました。90年代は2度の政権交代があり、7人の総理が目まぐるしく入れ替わった時代。その政権のいずれもが小沢を好きか嫌いか、受け入れるか拒絶するかということが軸になって出来上がっていった。与党も野党も小沢を中心に大きく揺れ動いていたのです。
小沢は現在、立憲民主党に所属。82歳の最古参国会議員となりました。もはや剛腕といわれた当時の面影も影響力もありませんが、90年代の親・小沢、反・小沢の対立軸の怨念のようなものは、いまも政界に残っています。
たとえば石破茂は、長年総理候補と言われていますが、自民党内にはそれを快く思っていない人たちがいます。それはかつて彼が小沢率いる新生党に参加した過去があるから。森喜朗などは、雑誌のインタビューでも公然と「派閥も都合の良い理由で出たり入ったり」(『月刊文藝春秋』2020年3月号)と語っていますし、直接面罵したという話も聞きました。