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石川が肩を並べて共に戦う存在になった

 春高で初めて注目を浴びた頃。日本代表に選出されてから飛躍的な成長を遂げ、東京五輪に出場した頃。「すごい選手だ」と騒がれながらも、髙橋を語る時は必ず「次世代の」や「若き天才」といった類のフレーズがついてきた。

 だが、 18歳から22歳になった髙橋に余分な枕詞はもう必要ない。今や、日本代表にとって不可欠な存在であることに誰も異論はない。

 

 高校時代は憧れ、目を輝かせながら、同じ練習をして追いつき、いつかそれ以上の自分になって追い越そうと、その背を見ながら走り続けてきた。そんな石川に対しても「あそこは自分に上げてほしかった」と、不満をストレートにぶつけられるようになった。

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 見上げるのでも、追いかけるのでもなく、肩を並べて共に戦う存在になった。イタリアでは互いにトップ選手同士として、プライドをかけて戦う。もちろん、石川だけでなく、世界中の至るところに超えるべき選手は数えきれないほどいる。そのすべてが、髙橋にとっては望んで求める成長の糧だ。

うまくいかなかったらまた挽回すればいい

 子どもの頃に描いた「オリンピックに出場する」という夢は、現実になった。春高でも優勝し、10代で日本代表に選出されるという、幼い頃には考えもしなかった未来を、今、生きている。

「子どもの頃に描いた自分は越えていますね。もちろん『オリンピックでメダル』は、まだこれからの話ですけど、壁にぶつかればぶつかっただけ、また強くなって、自信をつけられると思うし、そのイメージしかないです」

 叩きのめされることもあるかもしれない。激昂することもあるかもしれない。プラスばかりでない、想像を超えるような出来事に巡り合うかもしれない。

 

 それでも――。

「いつも言い聞かせているんですよ。自分に対して『俺はやれる』って。どんな状況でも、くよくよしたってしょうがない。うまくいかなかったらまた挽回すればいいし、やり返せばいい。この世界、やればいいだけですから」

 だから、俺に上げろ。爽やかな笑顔で、バレーボールに邁進する選手と侮るなかれ。衝突、上等。必要なら、怒りも上等。

 髙橋にとって、そのすべてが強くなるためのエネルギーだ。

写真=末永裕樹/文藝春秋

日本男子バレー 勇者たちの軌跡

田中 夕子

文藝春秋

2024年5月1日 発売