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1年に何度か起きるレベルのフレアでも…

 被害があったのは地表だけではありません。空に浮かぶ人工衛星もダウンしたり、故障したりするものが続出しました。

 フレアには規模によって等級がありますが、このフレアの規模はX5弱、つまり黒点極大期には年に数回は起こるレベルのものです。毎度同様の被害が必ず起こるというわけではありませんが、1989年の場合は、太陽風の向きや様々な悪条件が重なった結果、大きな被害となりました。ある意味不運だったといえるでしょう。

フレアの等級はX線の強度で表し、MクラスはCクラスの10倍、XクラスはCクラスの100倍、X10クラスはCクラスの1000倍……となっている。2003年のフレアは11月4日に発生。人工衛星や探査機に影響を与えたが、太陽の西のリム(縁)で発生したので、地球への正面衝突はまぬがれた 図版制作=小林美和子

 しかし、ひとつ間違えば、1年のうちに必ず何度かは起きるレベルのフレアでも大きな被害が出るということを、この例は示しています。ましてや、1989年当時よりはるかに電気に頼る生活をしている現在、同じようなことが起きたら、想定以上のできごとが発生するかもしれないのです。

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 停電がいかに大変であるか、東日本大震災はもちろん、それ以降も大きな地震や台風といった災害の際に経験した方も少なくないことでしょう。東日本大震災では被災地での電気施設の倒壊、流出といった直接的な被害はいうに及ばず、東京電力の管内では東京都心部を除く多くの地域で計画停電が実施され、社会に大きな混乱を起こしました。予告があっても混乱は免れないのですから、突然全電力が喪失する事態が起こったらどうなることか——。

「でも、そこまでの被害を起こすようなフレアが起こるの?」と思う方もいるかもしれませんが、わずか165年前に大フレアが起こっています。

キャリントンが見た白色フレア

 1859年のことです。イギリスにリチャード・キャリントンという天文学者がいました。彼は日々、太陽の黒点のスケッチをしていたのですが、ある日、そのスケッチ中にこれまで見たこともない明るい区域が現れ、そこから強烈な光が発せられているのを見たのです。キャリントンはおどろき、慌てて観測所の仲間を呼びに行ったのですが、戻ってきたときにはその光は消えていました。

キャリントンによるスケッチ。黒点の中、A、B、Dと示された白い部分がフレアと考えられる

 当時はフレアを観測するためのHα(エイチアルファ)フィルターなどの観測装置もありません。大きなフレアが発生したとき、まれに可視光(白色光)でフレアが見えるときがあります。これを「白色光フレア」といいます。キャリントンが見たのは、まさにこの白色光フレアだったのです。