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165年前がフレア観測の幕開け

 キャリントンだけが見たのであれば、そのままになってしまったかもしれませんが、幸運なことにもう1人、この現象を見た人がいました。イギリスのアマチュア天文学者であるホジソンです。

 そしてキャリントンが謎の発光を見たわずか17時間後、地球上をとんでもない磁気嵐が襲います。キューバやハワイのホノルルでオーロラを観測したとの記録が残っています。

 この時代、太陽の現象が地球に影響を与えるなどという考えはばかげていると思われていたようですが、地球のほとんどをオーロラが覆ったということになります。

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 磁気嵐というのは文字どおり強力な磁気の嵐で、地球の磁場を変動させてしまいます。太陽フレアから飛び出した大量のプラズマが地球磁気圏に衝突・侵入すると、地球磁気圏や電離層に大電流が引き起こされます。

磁気嵐の起こる仕組み。
(上)地球には磁場があり、磁力線がつつむようになっている。そこに太陽風という太陽からのプラズマの流れが衝突すると、太陽側の磁場は少し圧縮され、逆に反対側は引き伸ばされる。磁場があるおかげで太陽風が侵入してこない。
(下)太陽風の磁場の向きによっては磁気リコネクションが起こり、磁力線に乗ったプラズマが地球磁気圏に侵入してくる。グレーの帯はプラズマシート。プラズマシートとは、加熱された高温のプラズマがたまっているところ イラスト=ねもときょうこ

 そのため地球の磁場が激しく変動し、そのことで伝導体に電流が流れてしまうのです(たとえばコンセントとつながっていないコードに電流が流れたり、人工衛星に障害が起きたりします。電磁誘導によるものです)。

 このときキャリントンは、自分が見た太陽の現象と磁気嵐の関係を疑いますが、彼はことわざを用いて、慎重さを求めました。

「One swallow does not make a summer.」(ツバメが一羽来たからといって夏になるわけではない)

 このフレアは後に「キャリントン・フレア」と呼ばれるようになりました(残念ながらホジソンの名前は冠されませんでした)。

 太陽フレアの研究はここに幕を開けたのです。

 それではこのキャリントン・フレアはどのくらいの規模だったのでしょうか。