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外苑前再開発を都民は本当に問題視していたのか?

 調査にもよりますが、蓮舫選対がメディア対応も含めて争点に掲げた「外苑再開発」は、どの調査でも都民有権者にとっては割とどうでもいい話題に位置付けられ、主張の正当性はともかく少なくとも蓮舫さんの票にはつながらなかったと見られます。蓮舫さんや支持する市民の皆さまがこだわる「ジェンダー問題」も、都民にとってはあまり重要な問題とは位置付けられていないようです。

 告示前の立憲本部などの各政党の調査では、有権者に「外苑前再開発について、問題と感じるか」というパネル調査をやっていたようで、そこで6割近い都民から「問題だ」と回答を得たので、自信を持ってこの問題を争点に入れたと見られます。

 しかしながら、この手の争点の質問は落とし穴があり、質問を受ける側は「こういう話があるが、問題と思うか」と訊かれれば、割と素直に「問題だ」と回答するのです。これは、憲法改正だろうがコロナ対策だろうがモリカケだろうが「問題か?」と訊かれれば、だいたいの有権者が「それは問題だ」と応えるのと一緒です。

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 ただ、そういう争点が「投票のきっかけになるか」「その争点に対する態度で投票先を決めるか」と言われると、他に大事な問題があったり、政治家に対するもっと総体的なイメージを抱いていたりすると、まったく無視されます。つまり、問題かどうかでの反応と、それが投票に繋がる問題なのかは別問題なのです。社会調査のむつかしいところは、メディアによる議題設定能力を過大評価することが往々にしてある、ということです。

 結果的に、高齢者対策や、雇用問題、防災、待機児童ほか子育て支援など、東京が優先して取り組むべき問題については、なんだかんだ現職知事である小池百合子さんが一通り全部手がけてしまっています。蓮舫さんからすれば、これらの重要な分野での具体的なマニフェストを提示することができなかったのでしょう。

 明確な政策を公約として蓮舫さんが打ち出せなかったため「いまの都政をより良くしてほしい」と考えている有権者からすると、小池百合子さんよりも蓮舫さんのほうが良さそう、と思うことができなかったのではないかとも思います。

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