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「あの子は自殺するような子じゃない」木原誠二氏妻の元夫“怪死事件”遺族が悲痛告白…“伝説の取調官”が感じた被害者家族の無念

『ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録』より #5

2024/07/10

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 読書

note

(中略)

 女性刑事「捜査は尽くされていないので、少なくとも。結果はどっちに転ぶか、ちょっとそれこそ捜査をしてみないと分からないんですけど、でも終了しているとは思えないので、それをちょっと再開させていただきたいと思っています」

 母「よろしくお願いします」

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 音声では、刑事が事件について、本格的に証拠集めに乗り出している様子が分かる。

 女性刑事「お母さん、へその緒、持ってます? 種雄さんの。種雄さんのDNA取れるものって何かありますかね」

 父「担当の刑事が、検察に『もっと捜査しろ』と言われたらしい」

 女性刑事「まぁ言われるだろうなと思いますね。(中略)こちらがもっと早く手を付けなくてはいけなかったんだと思います」

故・安田種雄さん (遺族提供)

「これは殺人事件ですね。無念を晴らします」

 さらに、18年10月には刑事の1人が安田さんの友人に聴取。録音データの冒頭には、こんな発言があった。

 刑事「12年経って『もう一度捜査をきちんとしよう』と。まず『事件性があるのではないか』ということで捜査をしている」

 当時、安田さんとX子さんの2人の子供は16歳と14歳。友人が子供たちへの影響を懸念すると、

 刑事「我々が捜査をする糧といいますか、それは当然被害者なんですよね。亡くなった方の無念。ここで死ぬはずがなかった。明日があった。未来があった。あの日、あのときにそれが奪われてしまった。こんな無念なことはないと思うんです。その無念を晴らせるのが我々警察しかいない」

 刑事は「結論、出さないといけない」「事件だとしたら犯人(を検挙する)、というのは当然。法治国家ですので」と語る。それらの録音データから浮かび上がるのは、彼らが事件の解決に向け、並々ならぬ熱意を漲らせている様だった。安田さんの父が証言する。

「刑事さんは『これは殺人事件ですね。無念を晴らします』と。『全て解決したら一緒に一杯飲みましょう』なんて話していた」〉——。

安田種雄さんの父

唐突に終わった再捜査。「異様」な出来事だった

 だが、こうして始まった再捜査は、わずか8カ月後の2018年の12月に唐突に終わった。遺族はその際、何の具体的な説明も受けなかった。「立件票」も宙に浮いたまま放置され続けてきた。従来の捜査の「終わり方」として、長く刑事一課にいた俺も聞いたことのない「異常」、いや「異様」な出来事だった。

 なぜ、このようなことが起きたのか。

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