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店主は〇〇の総料理長だった

 倉持店主はフレンチ出身で和食の総料理長だったそうだ。寿司屋や割烹で働いていたこともあるとか。直近では和食の大箱の店の料理長をしていて多忙な日々を送っていた。そして定年を間近に迎え、第二の人生の場として自分の店を持ちたいと考えていた。ではなぜ立ち食いそば屋を選んだのだろうか。

モロヘイヤの天ぷらもある

立ち食いそば屋を選んだ理由が深い

 倉持店主は静かに話し始めた。「何万もする高級な和食や寿司などの料理を今まで随分やってきて、今度はもっと身近な日常の食べ物、日々忙しく働いている人に手頃な価格で喜んでもらえるような食べものを肩肘張らず提供したい。それなら立ち食いそばがいいのでは」と考えたというわけである。自分たちの食の経験を立ち食いそばに応用すれば、今までにない新しい味が作れるかもしれないとワクワクしたそうである。

紅しょうが天
かき揚げ天

なぜ板橋区役所前駅を選んだのか

 当初は住んでいた荒川区を中心に店舗物件を探していた。しかし、ガスカロリーや電気容量が十分な物件がなく、板橋区役所前に偶然に良い物件があって見に来たところ、近くには区役所はもちろん、板橋運転免許証更新事務所、板橋警察署、板橋消防署など多くの働く人たちが集結している街であることが分かり、即決したという。

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人気のいか天
ナス天とさつまいも天

「えんば」はとんぼのこと

 店名の「えんば」とはとんぼのことだそうで「恵無波」と書く。店の入口やポップにも羽黒とんぼの「えんば君」の可愛いイラストが描かれている。千鶴店長は趣味でイラストやマンガを描いていて、倉持店主が店名の候補を挙げたところ、どこにでもある様な名前だったので全て却下して、「えんば」とそのイラストを提案しそれが採用された。立ち食いうどん屋でも人気の「おにやんま」という店があるし、かつて豊洲には「とんぼ」という立ち食いそば屋があった。「えんば」もそんな範疇の名前ということになる。

えんば君のイラスト
えんば君は昔懐かしい羽黒とんぼだ

「げそ天そば」には魚粉がかかり登場

 そんな話をしていると「げそ天そば」が完成した。まず、つゆをひとくち。返しは穏やかで丸い。出汁は前面に主張するタイプではなく、じわじわと訴えてくるようなタイプである。もうひとくち。つゆは赤味がきれいだ。「げそ天」は大きめで食べ応えがある。前日に醤油、生姜、酒、大蒜などに漬けて一晩置いてから揚げているという。

げそ天は下味をつけた手間暇かけたもの