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アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏は、長らく躁うつ病に苦しんできた。なぜ、いま心の病を語るのか?

アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏は、長らく躁うつ病に苦しんできた。なぜ、いま心の病を語るのか?

内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, 読書, 医療, ヘルス

note

経済学と精神医学は似ている

浜田 さらに、これは追々お話ししてみたいのですが、私は経済学と精神医学、より正確には経済政策と医療にはどこか似たところがあるとも思うわけです。

内田 それは面白い視点ですね。どういうところでしょう?

浜田 英語で「うつ状態」は「ディプレッション(depression)」ですが、経済学では同じ言葉の「ディプレッション(depression)」は「不況」を意味しますから。英語で「大(だい)うつ病」は「メジャー・ディプレッション(major depression)」ですが、「グレート・ディプレッション(great depression)」と言えば「大恐慌」のことですね。わたくしは初診の医者にそう言う元気がありました。

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 言葉遊びのように聞こえるかもしれませんが(笑)、科学的でありながら、ひとつに解決策が定まらなかったり、患者さんや経済の変化を見ながら修正を重ねるところだったり、技法が科学というよりアートに近いと感じられるところなんかが共通していると思います。それはまた後々お話しすることにしますが、舞さんを聞き手にお迎えしたら、直接の主治医ではないからこそ聞いてもらえることもありそうです。学問や日米文化の比較や社会のことまで、多岐にわたるお話ができるのではないかと。それから、心の病は遺伝も大きいでしょうが、時代や社会など環境とも無縁ではないので、そのあたりも伺いたい。

内田 ありがとうございます。浜田さんのように経済学の研究実績もあって、日本の経済政策にも携わられた方が、ご自身の躁うつの闘病について、また、そこからの回復を語ってくださるのは本当に貴重だと思いますし、今回の対話の機会に感謝しています。

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