文春オンライン
アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏は、長らく躁うつ病に苦しんできた。なぜ、いま心の病を語るのか?

アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏は、長らく躁うつ病に苦しんできた。なぜ、いま心の病を語るのか?

内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, 読書, 医療, ヘルス

note
『うつを生きる 精神科医と患者の対話』

メンタルヘルスの現在地

内田 アメリカでは日常生活のなかでセラピーを受ける人も多いですし、メンタルヘルスで苦しんだ経験や精神科の受診について友達同士で語り合うのもごくごく普通のことになってきました。もちろん今でも偏見がまったくないわけではないにせよ、浜田さんがアメリカで精神科に最初かかられた1980年代半ば頃はおそらく今のようにオープンに語られることはなかったでしょうし、日本においてはなおそうだったのではないでしょうか。

 私は小児精神科医で、日ごろは子どもたちのメンタルヘルスの問題を扱っていますが、日本では小児精神科の確立が発達途上であることからも、まだまだ心の不調で医療にかかるのはハードルが高く、正しい知識も十分に伝わっていないのではないかと感じています。

 浜田さんがどのように躁うつ病とともに生きてこられたのか、アメリカでどのような治療を受けて何がきっかけで回復に向かわれたのか、そして息子さんをご自分も苦しまれたうつで亡くされるというつらい経験からどう立ち直られたのか。息子さんを亡くされるという体験、また、ご自身の闘病について浜田さんがつづられた手記を私は今回読ませていただきましたが、その手記の内容も交えてお話を伺いながら、心の不調とともに生きることのヒントも探っていけたらと思います。

ADVERTISEMENT

浜田 手記というのは、いまの私の妻であるキャロリンが私の口述をもとにして2000年頃にまとめてくれたものです。前半の2章は息子の広太郎のこと、後半の2章は入院中のことを含め自分の闘病について語ったものです。自分のこととはいえ今では忘れかけていることもあり、本書が生まれたのはこの手記があったからとも言えます。私のうつ症状の対処に苦労しながらも、こうやって記録に残してくれたことを、妻のキャロリンに感謝します。

関連記事