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東京オリンピック予選敗退に「次の監督は苦労するだろうな」と思っていたが…女子バレー日本代表監督・眞鍋政義が名乗りを挙げた“覚悟の理由”

『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』より#2

4時間前

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, スポーツ, 読書

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 女子バレー日本代表チームは、6月14日に国際大会「ネーションズリーグ」でパリ五輪出場を決め、強豪国に打ち勝って準優勝にまで上り詰めた。躍進するその姿に、パリでのメダル獲得への期待も高まっている。

 ここでは、そんな日本代表チームを引っ張る眞鍋政義監督の『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』(文藝春秋)より一部を抜粋して、強さの理由を探る。

 一度はロンドン五輪で銅メダル獲得までチームを導いた眞鍋監督。東京オリンピックでの予選敗退という厳しい結果を前に、どうして再び代表監督に名乗りを挙げたのか――。(全4回の2回目/続きを読む

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眞鍋政義監督 ©文藝春秋

◆◆◆

東京オリンピックがコロナで延期に

 未曾有のパンデミックに、バレー界はもちろん、スポーツ界全体が大きな影響を受けることになった。何より大きかったのが、東京2020オリンピックの延期である。

 決行か、延期か、中止か。政界や経済界の動きに巻き込まれ、スポーツ界は翻弄された。思ったような練習や準備ができず、選手たちも苦しんだと思う。東京を目標にしていた選手の中には、延期を受けて引退を選んだ者もいる。

 代表監督の中田久美にも大きな重圧がのしかかったはずだ。オリンピックで日の丸を背負うプレッシャーは経験してみないと分からないものだ。そこにコロナ禍をめぐるさまざまな問題が加わったのだから、その苦労は察するにあまりある。

 結局、オリンピックは1年遅れで開催されることになったが、各競技とも感染対策のため、無観客で行われることになった。私はテレビの解説を務めることになったのだが、観客のいない有明アリーナは、異様な雰囲気に包まれていた。本来は日本チームへの大声援が選手を後押しするはずだったのが、聞こえるのは監督と選手の声のみ。

初戦で起こったアクシデント

 初戦の相手はケニア。チーム力を考えればまったく問題ない相手である。ストレート勝ちして勢いに乗りたいところだ。実際、2セットは順調に連取したのだが、第3セットに思わぬ落とし穴が待っていた。エースの古賀紗理那がブロックに跳んだあと、着地時に相手選手と交錯し、右足首を捻挫してしまったのだ。起き上がることができず、そのまま途中退場。試合は代わりに出た石井優希の活躍もあり、3-0でものにした。しかし、初戦でのエースの負傷はあまりにも痛い。

古賀紗理那選手 ©文藝春秋

 2戦目はセルビア、3戦目はブラジルと、相次いで世界のトップチームと対戦した。どちらかから金星をあげれば、決勝トーナメントへの進出が見えてくる。しかし、日本は両試合とも0-3で完敗してしまう。最終的にセルビアは銅、ブラジルは銀メダルを獲ることになるわけだが、世界のトップとの差が如実に表れてしまった。

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