文春オンライン

東京オリンピック予選敗退に「次の監督は苦労するだろうな」と思っていたが…女子バレー日本代表監督・眞鍋政義が名乗りを挙げた“覚悟の理由”

『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』より#2

6時間前

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, スポーツ, 読書

note

4戦目の韓国戦、14-12でマッチポイントを迎えたが…

 予選ラウンドの4戦目は韓国戦。ここが正念場だった。負傷退場から6日で古賀がスタメンに復帰した。万全の状態ではなかったようだが、古賀がいるのといないのとではチームに与える安心感が違う。ただ、監督の中田久美はそれ以外のスタメンを大幅に入れ替えた。セッターは籾井あきに替えて田代佳奈美、オポジットは黒後愛に替えて林琴奈、ミドルブロッカーは島村春世に替えて山田二千華。

 ところが、それが裏目に出て、日本は試合序盤からミスを重ねた。韓国はエースのキム・ヨンギョンにボールを集め、先行する。日本はメンバーを交代しつつ流れを取り戻し、試合はフルセットにもつれ込んだ。

 こういうときに頼りになるのが荒木絵里香だ。ロンドンのときに主将を務めていた荒木は、その後出産もあり一時引退した。しかし、リオの前に代表に戻り、東京では自身4度目のオリンピックを、再び主将として迎えていた。

ADVERTISEMENT

荒木絵里香選手 ©文藝春秋

 荒木の気迫に導かれるように、古賀や石川真佑らアタッカー陣も奮闘。日本は14-12でマッチポイントを迎えた。あと1点という場面。セッターの籾井あきは連続して石川にトスを上げた。しかし、石川が決めきれず、デュースに持ち込まれた。その勢いで韓国が14-16と逆転。日本は3連敗となり、いよいよ崖っぷちに追い込まれた。

自国開催での予選ラウンド敗退に

 予選ラウンド最終戦の相手はドミニカ共和国。お互いに決勝トーナメント進出をかけた一戦となった。勝てない相手ではない。しかし、プレッシャーで硬くなっているのか、この試合も日本はミスを連発。第1セットは10-25で落とした。ドミニカ共和国は勢いに乗って2セットを連取。あとがなくなった第3セットは日本が取り返したが、結局1-3で敗戦。日本は1勝4敗のプールA5位。全体の10位で自国開催のオリンピックを終えた。

 57年前、前回の東京オリンピックでは東洋の魔女が金メダルに輝いた。栄光の歴史があるだけに、日本の女子バレーにはいつも大きな期待と同時に、厳しい目が注がれる。これまで4大会連続で決勝トーナメントに進んできたこともあり、自国開催での予選ラウンド敗退は、関係者にとっても、ファンにとってもまさかの結果だった。

 無観客の静かなアリーナで、ドミニカ共和国の選手たちは喜びを爆発させ、日本の選手たちはうなだれている。オリンピックの試合とは思えない、奇妙な光景だった。

 解説で何を話したのかは覚えていない。ただ。「女子バレー、これから大変だなあ……」と思ったのはよく覚えている。開催が延期されたことで、次のパリまでは3年しかない。「これで次のオリンピックに出られるんだろうか……」と考えながら、ひとまずホテルに戻ることにした。

関連記事