女子バレー日本代表チームは、6月14日に国際大会「ネーションズリーグ」でパリ五輪出場を決め、強豪国に打ち勝って準優勝にまで上り詰めた。躍進するその姿に、パリでのメダル獲得への期待も高まっている。
ここでは、そんな日本代表チームを引っ張る眞鍋政義監督の『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』(文藝春秋)より一部を抜粋して、強さの理由を探る。
一度はロンドン五輪で銅メダル獲得までチームを導いた眞鍋監督。東京オリンピックでの予選敗退という厳しい結果を前に、どうして再び代表監督に名乗りを挙げたのか――。(全4回の2回目/続きを読む)
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東京オリンピックがコロナで延期に
未曾有のパンデミックに、バレー界はもちろん、スポーツ界全体が大きな影響を受けることになった。何より大きかったのが、東京2020オリンピックの延期である。
決行か、延期か、中止か。政界や経済界の動きに巻き込まれ、スポーツ界は翻弄された。思ったような練習や準備ができず、選手たちも苦しんだと思う。東京を目標にしていた選手の中には、延期を受けて引退を選んだ者もいる。
代表監督の中田久美にも大きな重圧がのしかかったはずだ。オリンピックで日の丸を背負うプレッシャーは経験してみないと分からないものだ。そこにコロナ禍をめぐるさまざまな問題が加わったのだから、その苦労は察するにあまりある。
結局、オリンピックは1年遅れで開催されることになったが、各競技とも感染対策のため、無観客で行われることになった。私はテレビの解説を務めることになったのだが、観客のいない有明アリーナは、異様な雰囲気に包まれていた。本来は日本チームへの大声援が選手を後押しするはずだったのが、聞こえるのは監督と選手の声のみ。
初戦で起こったアクシデント
初戦の相手はケニア。チーム力を考えればまったく問題ない相手である。ストレート勝ちして勢いに乗りたいところだ。実際、2セットは順調に連取したのだが、第3セットに思わぬ落とし穴が待っていた。エースの古賀紗理那がブロックに跳んだあと、着地時に相手選手と交錯し、右足首を捻挫してしまったのだ。起き上がることができず、そのまま途中退場。試合は代わりに出た石井優希の活躍もあり、3-0でものにした。しかし、初戦でのエースの負傷はあまりにも痛い。
2戦目はセルビア、3戦目はブラジルと、相次いで世界のトップチームと対戦した。どちらかから金星をあげれば、決勝トーナメントへの進出が見えてくる。しかし、日本は両試合とも0-3で完敗してしまう。最終的にセルビアは銅、ブラジルは銀メダルを獲ることになるわけだが、世界のトップとの差が如実に表れてしまった。