女子バレー日本代表チームは、6月14日に国際大会「ネーションズリーグ」でパリ五輪出場を決め、強豪国に打ち勝って準優勝にまで上り詰めた。躍進するその姿に、パリでのメダル獲得への期待も高まっている。

 ここでは、そんな日本代表チームを引っ張る眞鍋政義監督の『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』(文藝春秋)より一部を抜粋して、強さの理由を探る。女子バレーをマネジメントするにあたって“数字”を重要視する理由とは――。(全4回の1回目/続きを読む

眞鍋政義監督 ©文藝春秋

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男子とはまったく反応が違った女子選手

 私が数字を重視するようになったのは、勝つため以外に、もうひとつ理由がある。それは女子選手をマネジメントするためである。

 男子バレーで育ってきた私が、最初に女子選手と接するようになったのは2005年、Vリーグの久光製薬スプリングスの監督に就任したときだ。私は自他ともに認めるポジティブ思考の人間。男女の違いがあるといっても、ネットの高さが違うだけで(男子は243cm、女子は224cm)、ルールは同じ。コートの大きさも変わらない。女子チームを率いることに不安は抱いていなかった。

「元日本代表で、セリエAでもプレーした眞鍋さんが新監督としてやって来る」。きっと選手たちは楽しみにしてくれているはずだ。私は張り切って最初のミーティングに臨んだ。

 挨拶もそこそこに、世界の最新の戦術や、これから久光製薬をどんなチームにしていきたいかなど、10分ほど熱っぽく語った。みんな感銘を受け、尊敬の眼差しで私のほうを見ている……と思いきや、ほとんどの選手がきょとんとした顔をしている。

「どう思う?」「分かるか?」と問いかけても、誰も答えない。男子選手とはまったく反応が違う。男子の場合、私が最初に在籍した新日鐵では、けんか腰の議論がしょっちゅうあった。旭化成でもパナソニックでも、選手たちは自分の意見をぶつけてきた。ところが、女子はまったく勝手が違う。

 Vリーグでプレーする女子選手は、中学、高校をバレー名門校で過ごし、厳しいカリスマ監督たちの指導を受けてきた者がほとんどだ。監督の指示は絶対。口答えは許されない。そのため、自分の意見を表に出すよりも、監督の顔色をうかがう癖がついてしまっている。よく言えば素直なのだが、積極性に欠ける面もある。

 では、新しくやって来た監督の言うことにすぐ従うかというと、けっしてそんなことはない。「どんな監督なんだろう」と様子を見る。そして、監督が自分の方針を押しつけようものなら、「女子バレーを分かってない」と反発する。

 男同士ならけんかをしても、そのあといっしょにサウナに入って、酒でも飲めばわだかまりはなくなる。ところが、女子の場合、いったん反感を持たれると、選手が対監督でまとまってしまうことがある。