女子バレー日本代表チームは、6月14日に国際大会「ネーションズリーグ」でパリ五輪出場を決め、強豪国に打ち勝って準優勝にまで上り詰めた。躍進するその姿に、パリでのメダル獲得への期待も高まっている。

 ここでは、そんな日本代表チームを引っ張る眞鍋政義監督の『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』(文藝春秋)より一部を抜粋して、強さの理由を探る。

 パリを最後に引退することを発表した古賀紗理那選手。ずば抜けた力を持つスパイカーである彼女が、2023年のネーションズリーグでコンビを組むセッターとうまく噛み合わないという問題が勃発した。その時、眞鍋監督が古賀選手に伝えた意外な言葉とは……。(全4回の4回目/最初から読む

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眞鍋政義監督 ©文藝春秋

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トスとスパイクの微妙なズレ

 チーム内では、セッターとアタッカーのコンビネーションが合わないという問題が起きていた。高速コンビバレーは日本の生命線。これまで私は攻撃のテンポアップをひたすら追求してきた。選手たちもそれに応えようとがんばってくれた。

 1年目は大きな問題はなかったのだが、2年目に入ってトスとスパイクのタイミングに微妙なズレが生じてきた。そこに疲労やコミュニケーションの齟齬が重なり、チームの状態が悪化していた。それが表面化したのがドイツ戦である。

 ネーションズリーグの序盤、世界のトップは全力を出さない。しかし、その次のグループは違う。とくに今年はオリンピック予選が控えている。各国とも主力を揃え、全力で戦っている。今回の対戦相手で言うと、ドミニカ共和国、ドイツ、オランダといった国がそうだ。ベストメンバーが揃ったときの彼女たちは手強い。去年のネーションズリーグとは比べ物にならない。

 日本はここまで4勝2敗。予選ラウンド突破を考えると、ドイツには勝ちたい。しかし、チーム状態は明らかに向こうが上だった。

 ドイツの監督はフィタル・ヘイネン。2018年、男子のポーランドを世界選手権優勝に導いた名将だ。男子バレー仕込みのブロックに圧倒され、サーブで崩され、おまけにこちらはコンビが合わない。場合によっては0-3で負けてもおかしくない試合だった。それをやっとのことでフルセットに持ち込んだが、最後は力負けした。

 ドイツに負けて4勝3敗。しかも次はアメリカ戦。予選突破に黄色信号が灯り、チームの雰囲気も暗い。

 ここで私は“カンフル剤”を打つことにした。