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 最初にお話をいただいてから、映画完成まで9年くらいかかっているという、実は壮大な作品です(笑)。

60~80秒の長いワンカットにロトスコープの魅力が凝縮

あんずちゃんの特製ぬいぐるみ。首から下げているガラケーがポイント。

──実際に制作するにあたり、大変だったのはどんなところでしたか?

 実写とアニメーションのワンカットの長さの違いです。

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 普通の商業アニメだと、ワンカットは長くても6〜7秒くらいで、短いと1秒未満というものもザラです。でも山下監督はワンカットが12秒くらいが普通で、長いと30〜60秒くらいのもあったりしたので、戸惑いました。 

 アニメーションは一般的に1カットの中で意図しない、矛盾がないように美しく描く技術が求められます。なのでワンカットの尺が長くなればなるほど、アニメーターさんの負担が増えるのですが、『化け猫あんずちゃん』では最長で80秒のワンカットがありました。

 かりんちゃんの複雑な感情が描かれているカットがあるのですが、ワンカットのなかでかりんちゃんの揺れ動く感情の高まりが長尺でていねいに描かれていて、これまでにない挑戦的なカットだと感じました。

──ワンカットの尺が長いというのは、実写の撮り方なんですか?

 これは実写がというより、山下監督の味だと思います。山下監督はお芝居を大事にされている方なので、お芝居を見せるためにカットを割らない、という選択をされることが多々あります。

 あまり長いと、途中でカット割りしようかという話も出るんですが、ワンカットで見せたほうが芝居が伝わると判断したときには長くなります。アニメとしては、尺がのびるほど作業が大変になるのはわかっていても、一緒に編集をして間近で山下監督が演出したカットを見ると、「ここは割らないほうがいいよね」と思えてしまう場面も多くありました。そんなふうに、お芝居の良さを勉強できたことも、今回の貴重な体験でした。

インタビューを見守るあんずちゃん。

──人間が人間を演じるのではなく、人間が化け猫を演じる、というのは実写だとハードルが高いように感じます。