映画『化け猫あんずちゃん』で、「ロトスコープ」という手法で、お芝居をアニメに落とし込んだ久野遥子監督にインタビュー。

 映画の魅力やロトスコープの面白さについてお聞きしました。


カツ丼好きで仕事は按摩、パチンコが趣味の37歳の猫

久野遥子監督。

──久野監督はもともと原作の『化け猫あんずちゃん』ファンだったそうですね。

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 はい。『化け猫あんずちゃん』の、というよりも、高校生くらいの頃から原作者のいましろたかしさんのファンでした。

 いましろさんの作品って、結構ビターなというか、生きることの難しさや葛藤を描いた作品が多いんですけど、そのなかで『化け猫あんずちゃん』は、主人公が猫だからか、あまり重くないというか。重いものを背負っていたり、人生に苦悩したりするキャラクターも登場しますが、あんずちゃんはそれに引きずられずに「にゃっはっは」と傍観していく。そんな猫らしい軽やかさを持ちながら、一方では「カツ丼好きで仕事は按摩、パチンコが趣味の37歳のおっさん」らしいふてぶてしさみたいなものも併せ持っていて、それがすごく印象的でした。

©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

──『化け猫あんずちゃん』の映画をロトスコープでやろうというのは、久野監督のアイデアですか?

 もともとはプロデューサーの近藤(慶一)さんのアイデアです。

 近藤さんはもともと実写畑の方で、私は近藤さんが助監督として参加された岩井(俊二)監督の『花とアリス殺人事件』で、ロトスコープアニメーションディレクターとしてはじめてお会いしました。近藤さんは、その前に山下(敦弘)監督の『苦役列車』にも助監督として参加されていて、山下監督と『化け猫あんずちゃん』が好き、という話をしていたらしいんですよ。

 その後、近藤さんは「クレヨンしんちゃん」のプロデューサーをされるようになったんですけど、いましろたかしさんの原作漫画をロトスコープでアニメ化する企画を思い立ったときに、山下監督と私のことを思い出してくださり、お声がけいただいた、という経緯です。