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 あと、原作にも登場するキャラクターですが、ロトスコープによってオリジナルキャラのような新鮮味が出せたのは、池照町(いけてるちょう)の地元の男の子2人組です。子役の役者さんたちが演じたのですが、昭和の子どもと違って手足が長いうえ、「ヤンキー座り」に慣れていないので、アンバランスなぎこちない動きが逆に独特の味を出していて。それが絵としても表現できたので、非常に面白いニュアンスが出せたなと思っています。

実写チームが驚いた「天気に左右されない」アニメの面白さ

久野遥子監督。

──実写とアニメで、山下監督と意見の相違や見解の違いなどは生じなかったのでしょうか?

 撮影から参加して、山下監督がどんな熱量でお芝居を撮っているのか間近で見せていただいたので、そこに対する不満や意見などはまったくありませんでした。逆にお互いがお互いを尊重し合って、いい形での相乗効果が出せたのではないかと思っています。

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 意見の相違ではありませんが、山下監督が「天気に左右されない」ことを面白がってくれたのは新鮮な感覚でした。

 実写の場合、明るいシーンを撮るのに「晴れ待ち」などをしたりするそうですが、ロトスコープの場合は、背景やお天気はあとからどんなふうにも変えられるので、天気に左右されません。

 夜でも昼間にできるし、晴れていてもあとから雨を降らせることもできます。アニメーションを描いているとあたりまえのことですが、山下監督から「アニメーションって面白いね」と言われ、そうか、面白いのかとあらためて気づきました。

──今作を作り終えた感想をお聞かせください。

 実写で撮影したものを徐々にアニメ化していくのですが、少しずつ実写から絵の部分が増えていくので、観るたびにはじめての作品に出会う新鮮さがありました。

 できあがったときは、それまで「実写映画」として観ていたのにいつのまにか「アニメ映画」の味わいも加わって。音楽も入るとまた違った印象になり、それが面白いなと思いました。