人間の言葉を話し、人間のように暮らす「化け猫」あんずちゃんと、大人の前では“いい子”の少女・かりんとの交流を描いた映画『化け猫あんずちゃん』。

 実写で撮影した映像をアニメ化する「ロトスコープ」という手法で、お芝居をアニメに落とし込んだ久野遥子監督にインタビュー。作品づくりについてお聞きしました。


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久野遥子監督。

──なぜアニメーション作家を目指そうと思われたのでしょうか。もともとアニメが大好きだったのですか?

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 実は子どもの頃からずっとアニメが大好きだった、というわけでもないんですよ。どちらかというと実写の映画に興味があったんですが、学生のときにたまたま『すて猫トラちゃん』という政岡憲三さん演出の短編アニメーションを観て、それに感動したところから、アニメーションに興味をもつようになりました。

 この作品は、いまの日本のアニメーションが確立されるずっと前の、1947年に制作されたものです。「ロトスコープ」の技術は使われていなかったはずですが、細かく観察された動きがていねいに描かれていて、独特の生々しい動きと、フニフニしたかわいらしさみたいなものが見事に表現されています。「戦後すぐ、日本にこんなアニメーションを作っている人がいたんだ」と強烈な印象を受け、そこからアニメーションへの興味が一気に高まった、というのがアニメーションの世界を目指すきっかけとなりました。

 アニメーターではなく、漫画家やアニメーション作家という方向に向かったのは、「物語があるものを絵として描きたい」という思いでアニメにかかわってきたからかもしれません。

©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

──今作で使われたロトスコープという手法自体はご存じだったのでしょうか。

 はい、知識としては知っていました。ロトスコープは実写で撮影した映像からアニメーションを起こす手法で、発明されたのは1915年と古い歴史があります。ディズニー映画などでも古くから使われているので観たこともありますし、こういうものなんだろうなというのはなんとなく知っていたつもりでした。