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 ゼロからロトスコープで長編作品を作ったのが今回はじめてだったので、最初は苦労しましたが、山下さんにとっても長編アニメーション作品にかかわるのははじめてです。「はじめて」を共有できる方とご一緒できたという点では、とても安心感がありました。

久野遥子監督。

──今後挑戦したいことや目標などあれば教えてください。

 今作で私は、あらためてお芝居の大切さに気がつきました。

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 これまでは、俳優さんがどんなにいいお芝居をしてもアニメ化することで情報量が減ってしまうと思っていたんです。でも今作で、実写のお芝居って実はアニメに持ってこれるんだということを初めて体感できました。これは、山下監督がお芝居を大事にされていたからだと思います。

 動きが増えれば増えるほどアニメ化は大変にはなりますが、俳優さんのうなずき一つ、動き一つで感情表現は大きく変わるので、いいお芝居を見つけ拾っていくことも大事なんだと気づけたのは大きな発見でした。

 私は実写の監督ではないので、この先実写映画を作ることはないと思いますが、実写でもアニメでもいま、女性の監督も増えてきていますし、これからもどんどん新しい才能が生まれてくると思います。そういう方たちと一緒に、お芝居の大事さをどう自分の世界に持ち込んでいくかということも、考え続けていけたらいいなと思っています。

久野遥子(くの・ようこ)

1990年、茨城県つくば市生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2015年、岩井俊二監督による『花とアリス殺人事件』のロトスコープアニメーションディレクターに抜擢され、以降『宝石の国』の演出・原画や、『ペンギン・ハイウェイ』のコンセプトデザイン、映画『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』のキャラクターデザイン・コンテ・演出・原画等で活躍している。