そうですね。そこは、あんずちゃんを演じてくださった森山(未來)さんの存在が大きいと思います。
山下さんは監督を務めた『苦役列車』で森山さんとご一緒されたときから、その身体能力の高さに注目されていたそうです。あんずちゃんをロトスコープで、という企画がもちあがったときから、あんずちゃんを演じてもらうなら森山さんがいいと思っていたとお聞きしました。
あんずちゃんは猫でありながら、冴えない37歳のおじさんでもあり、その両方のバランスを森山さんはすごくいいあんばいで出してくださったなと思いました。
森山未來さんは動きに“ノイズ”がないとアニメーターの間で話題に
──実写からアニメ化する際に、猫であるあんずちゃんと、人間であるかりんちゃんではやり方が異なるのですか?
やり方は同じですが、デザイン的に変えざるを得ないところはあります。たとえば森山さんは細身なので、あんずちゃんにするには等身も形状もかなり変えていますが、かりんちゃんにかんしては、五藤(希愛)さんの体型や髪型をほぼそのまま活かしてアニメ化しています。
ただ、森山さんはダンサーだからなのか、お芝居に余計な動きがまったくありませんでした。作画をする上でノイズのない動きをされているので、すごく絵を起こしやすかった。これはほかのアニメーターさんたちもみな絶賛していました。
五藤さんは、あの年齢じゃないとできない表情や動きをしてくれたので、それをいい形で絵でも表現できたと思っています。
──かりんちゃんは原作にはないキャラクターです。映画オリジナルのキャラクターをつくった経緯とこだわりを教えてください。
あんずちゃんはインパクトのあるキャラクターではありますが、どっしりとしていて物語を動かすキーパーソンにはなりません。長編映画としてみせる場合には、もうひとり引っかき回す強いキャラクターが必要だという話は最初から出ていました。
そのなかで、山下さんと「ちょっと不機嫌な女の子っていいよね」という意見が出て、親子げんかの末にお寺に置いていかれる11歳の女の子・かりんというキャラクターが生まれました。