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 小泉の秘書官だった飯島勲が公認の条件としてライブドア社長を降りて会長となるよう求めたが、堀江は「それは受け入れられない」と反論した。この応酬は怒鳴り合いになったというが、やりとりを隣で聞いていた園田は「堀江さんは『株主は自分を信じて株を買ってくれている。だからここで辞めるなんていう無責任なことはできない』と、かなり熱い口調で突っぱねていました」と言う。結局、自民党による公認は諦めて無所属での出馬を決めた。

尾道での敗北

 堀江が相手に選んだのが、自民党を離党して国民新党を結成した亀井静香だった。自民党の公認は得られなかったが、小泉が掲げる郵政民営化に賛成する立場は変わらない。そもそもこの選挙は小泉のキャンペーンによって、すっかり郵政民営化に焦点が絞られていた。

 それなら小泉が郵政民営化への「抵抗勢力」とのレッテルを貼った反対派のボスと目された亀井を破ることができれば、ポスト小泉への最短ルートに乗ることになるのではないか―。

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 そう考えた堀江が立候補したのが、縁もゆかりもないように思われた広島6区だった。尾道から北側の山あいにかけて広がる選挙区だ。亀井の地盤である。尾道を中心とする瀬戸内海に面する静かな町並みが、堀江貴文という異端児の出現に沸くことになった。

 8月19日、堀江は昼ごろに永田町の自民党本部を訪れて小泉との面談を済ませると、その足で尾道へと向かった。新幹線と在来線を乗り継いでJR尾道駅に着いた頃には午後8時を回り、すでに日は暮れていた。目の前に尾道水道の海を望み普段は落ち着いた雰囲気の駅前に、1000人ほどの人だかりができていた。堀江が改札を抜けて姿を見せるとやじ馬がわっと周囲を取り囲む。

©文藝春秋

 こんなこともあろうかと手配されていた車に乗り込むと、運転手が群衆を見ながらあきれたように言った。

「こりゃあ、尾道じゃあ、たのきんトリオが来て以来のフィーバーじゃねぇ」

 その様子を堀江の隣で眺めていた選対本部長の園田は「インターネットでは感じない熱気でした。亀井さんに勝つのは難しいと思っていたけど、負ける気もしなくなりました」と振り返る。

 この日は尾道駅の近くにあるホテルで記者会見を開いたが、堀江ら一行が選挙期間中に陣取ったのが、瀬戸内海を望む高台にあるリゾートホテルの「ベラビスタ境ガ浜(現ベラビスタスパ&マリーナ尾道)」だった。実は堀江がここに来るのは初めてではない。